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月刊誌「健康づくり」2001年11月号より

日本食生活協会の取り組みについて

戦後の貧しい時代にキッチンカーで栄養指導
栄養指導車  年配者の中には、栄養指導車(キッチンカー)のことを記憶している人も多いのではないだろうか。日本食生活協会は、昭和30年に設立され、その翌年、その栄養指導車による巡回指導で本格的に活動を開始した。以来、半世紀近く食生活の改善を目指して地道な活動を続けてきた。『健康日本21』推進国民会議の主要メンバーでもある。日本食生活協会のこれまでの活動と健康日本21への取り組みについて、松谷満子会長に話を聞いた。

 「栄養指導車で巡回指導を始めたころは、まだ着るものも食べるものも十分ではなかった時代で、栄養のバランスのとれた食生活のあり方を国民全般に普及するのが目的でした。バスを改造して調理設備を備えた車をつくり、町や村、山の中まで巡回して講習会をやったんです。栄養についての話をし、実際に料理をつくって試食してもらいました。料理が珍しかったこともあって大変好評で、どこでも大勢の方が集まってくださいました」。

 栄養指導車は行く先々で黒山の人だかりができるほどの人気だったという。その後、この事業は各都道府県に引き継がれたが、その教材『ゆたかな食生活への道』は日本食生活協会が作成。配布部数2,700万部というから当時としては驚異的な数字だ。

健康づくりの案内役 食生活改善推進員を育成
食生活改善推進員シンボルマーク  日本食生活協会は、巡回指導を続ける中で、よりよい食生活を定着させるには地域に根ざした活動が必要なことに気付き、そのための組織づくりに乗り出す。

 「保健所と協力して栄養教室を開催し、その修了者を会員とするシステムづくりを始めたんです。それが食生活改善推進員(ヘルスメイト)です。いってみれば地域の健康づくりの案内役ですね。新聞でも『健康おばさん』として取り上げられ話題になりました」。

 食生活改善推進員は「私達の健康は私達の手で」を合い言葉に、それぞれの地域で食生活を通したボランティア活動に取り組み、昭和45年には2万人が参加して全国組織が結成された。いまでは会員数23万人という大組織に成長している。
 日本食生活協会は、この全国食生活改善推進員団体連絡協議会と手を携えて、生活習慣病予防講習会、親子料理教室、料理コンクール、健康展などのほか、禁煙や運動の奨励など幅広い活動を展開してきた。近年は時代の要請に応じて在宅介護食ボランティア事業にも意欲的に取り組んでいる。年間の活動回数は約510万回、活動延べ人数は2,600万人にのぼるという。

3年間で100万人のヘルスサポーターを
 健康日本21では、9つの分野で70の目標が設定されており、「栄養・食生活」の分野では、適正体重の維持、脂肪や塩分摂取量を減らす、野菜やカルシウムに富む食品の摂取量を増やす、朝食抜きの人を減らす、食生活改善意欲のある人を増やす、学習の場の増加と参加の促進などが挙げられている。

 「これらの大部分は日本食生活協会が長年にわたって取り組んできたテーマでもあります。これまでの活動は意義のあるものだと思っていますが、今回の健康日本21で目指しているのは、何を何回やったかという数字的な活動の仕方ではなく、よい食習慣をもつ人がどのくらい増えたかということ。講習会などで得た知識を生活の中で実践し、健康寿命を延ばすことが大切なんです。今後はこれまでの活動を続けながら、その中に質的な変化を取り入れていきたいと考えています」。

 その最初の事業が『ヘルスサポーター21』。ヘルスサポーターとは「自分の身体レベルや生活スタイルにもとづいた健康づくりを実践し、自分の目標を達成する人」とされている。中学生から高齢者までを対象に、3年間で100万人のヘルスサポーターの育成を目指す。
 これまで日本食生活協会では、健康管理の中心は一家の主婦であるという観点から基本的に女性を対象にしてきたが、今後は男性にも枠を広げるという。「昔は男子厨房に入らずなんて言いましたけど、これからの超高齢社会においては男性も自立できないと生き残れません」と松谷会長。
 具体的には、全国23万人の食生活改善推進員が自らの体験をもとにして周囲に呼びかけ、学校や地域で講習会を行う。中・高校生向けと成人向けとがあり、それぞれ1日コースと2日コースが用意されている。終了者には登録証が発行される。今回の講習会では、知識や情報の提供にとどまらず、実践とその評価にポイントがおかれている。

 「例えば肥満の子がいたとしますね。清涼飲料などの1,000ミリパックを一日に何本も飲む子は珍しくありませんから、この中にはこれだけの砂糖が入っているんですよと具体的に量を示して納得してもらい、3本飲んでいたのを2本にしようとか麦茶に代えてみようとか、自分で考えて目標を立ててもらいます。無理なくできることでいいんです。そして何カ月か実行した結果、自分のからだにどんな変化が起きたか書いて出してもらいます。体重が減れば最高ですけど、少しからだが締まった気がするという程度でもいいんです」。

 『ヘルスサポーター21』はすでに昨年モデル事業として行なわれ、平成13年から本格的にスタートした。

BMI(体格指数)を一般社会常識に!
 健康日本21に掲げられている目標の中で、特に力を入れているのが適正体重を徹底させること。いまは大変な健康ブームで健康に関する知識や情報があふれているようにみえるが、「体重計に乗って増えた減ったと一喜一憂するくらいで、適正体重の計算法を知らない人が大半です」とのこと。意外に基本的な部分は欠落しているらしい。

 「講習では、BMI法で自分の肥満度と適正体重を計算してもらい、家に帰って家族の分も計算してもらうようにしています。それだけでもかなり違うと思います」。

 BMI(体格指数)は、肥満度の測定に用いられるもので、体重(kg)÷〈身長(m)×身長(m)〉(または体重÷身長÷身長)で計算する。BMIが25以上なら肥満、18.5未満はやせ過ぎ。18.5〜25未満が標準範囲で、22のときが最も病気にかかりにくく健康的とされている。そこで、適正体重は身長(m)×身長(m)×22で計算する。

 「自分の適正体重を認識することは健康づくりの基本ですから、BMIを一般社会常識にしたいんです。友人同士の会話に、あなたのBMIはいくつ? なんていう話題が自然に出てくるようになってほしいですね」 と松谷会長は意欲的だ。


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