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月刊誌「健康づくり」2001年12月号より

健康保険組合連合会の取り組みについて

一次予防に重点を置いた保健事業の推進
 健康保険組合連合会(健保連)に加入する健保組合数は1,728、事業所数は132,000、被保険者数は1,533万人、被扶養者数は1,645万人にのぼる。健保組合は公法人で、厚生労働省が示す事業運営基準に従って保健事業を行っている。昨年、21世紀における国民健康づくり運動『健康日本21』がスタートしたのに伴って運営基準が改正され、健康日本21の理念・方針が盛り込まれた。
 健康日本21では、〈栄養・食生活〉〈身体活動・運動〉〈休養・心の健康づくり〉〈たばこ〉〈アルコール〉〈歯の健康〉〈糖尿病〉〈循環器病〉〈がん〉の9つの分野で数値を含めて70の目標が設定されており、健康を増進し発病を予防する一次予防に重点が置かれている。
 健保連では、この運動に組織的に協力することを機関決定し、各組合の取り組みを支援するためのさまざまな活動を展開している。それについて桂川哲夫保健部長、東條謙三健康開発課長に話を聞いた。

 「健保組合の保健事業はこれまで2次予防とされる健診にウエートが置かれていましたが、今後は健康日本21の基本方針である1次予防にいっそう重点を置いた事業の取り組みが求められております。ただ、健康日本21に掲げられている目標の多くはすでに健保組合が長年にわたって取り組んできたテーマでもありますから、従来の事業に健康日本21の冠をつけ、その理念に沿う形に組み替えていくのが現実的な対応策ではないかと思います」。

 例えば各種の健診にしても、受診者への健康教育を行うとともに、要観察者に対する保健指導(事後フォロー)をきちんと行い発病を防ぐことで1次予防につなげたいという。独自で保健婦をおく余裕のない組合を対象にした保健婦共同設置事業なども積極的に進められている。また、1次予防に寄与する人間ドックのあり方なども検討中だという。

研修会やセミナーを開催し具体的な事例を紹介
 健保連では、健康日本21の啓発・普及をはかるために各種の研修会やセミナーを開催しており、機関紙、テレビ(「おはようけんぽれん」)などでも情報提供を行っている。

 「健康日本21とはどういうものかは皆さん承知しておられますが、では具体的にどうすればよいのかということになると手探り状態の健保組合もあり、健保連や国のほうから具体策を指示して欲しいとの要望も寄せられています。しかし、業態や規模の異なる健保組合が1,700以上もあるわけですから統一したプランを出すのは難しいんです。やはり各組合さんの特性や実情に応じたプランづくりが必要になります。松下電器さんをはじめ意欲的に健康日本21に取り組んでいる健保組合は数多くありますから、そうした事例を積極的に紹介し、他の組合さんに参考にしていただきたいと考えています」。

 松下電器健康保険組合では、すでに『健康松下21』を策定し、10年計画で職場の健康づくり運動を進めているという。松下電器でも従業員の高齢化や生活習慣病の増加といった健康問題を抱えており、これらを放置すると在職死亡者数の増加、作業能力の低下、休業日数の増加をもたらし、ひいては企業活力の低下や医療費の増大につながるという認識のもとに、会社・労組・健保組合が一丸となって積極的に運動を展開している。
 各事業所ごとに従業員の健康状態を分析してグループ全体の数値などと比較し、取り組むべき課題が見えてきたら具体的な数値目標や達成目標を設定する。そして対象者を選定し、効果的な介入方法やプログラムを作成して実行してもらう。その成果を検討し、それを踏まえて次の活動を展開する。こうした7段階のシステムづくりがなされている。
 もちろん、すべての健保組合がこうした理想的な取り組みができるわけではない。

 「9つの分野すべてに取り組むには人手もお金もかかります。財政的に余裕のない健保組合が多いので、何か1つか2つに絞って重点的に取り組むのがよい方法かと思います。例えば、他と比較して循環器病が多いという調査結果が出たら、まずその課題に取り組んでみる。それで成果があがれば、次の方向が見えてくるのではないでしょうか」。

 健保連では、具体策についてアドバイスしてくれる専門家を招いてセミナーや講演会を開催しており、また保健事業の各領域ごとに相談できる専門家の名簿を作成して配布するなど、きめ細かい対応を行っている。

事業主・労組・健保組合の三位一体の協調体制を目指す
 「松下電器さんのように事業主や労組の協力がなくては総合的な対策を行うことは不可能です。事業主・労組・健保組合の三位一体の協調体制の確立を目指していますが、不況による費用削減、リストラが問題になっている時期でもあり、事業主さんのほうは消極的になりがちですから、それをどう取り込んでいくかも重要な課題といえます」。

 老人保健拠出金の負担によって健保組合の財政が圧迫され、保健事業費が年々減少していることも健康日本21運動を進めるうえでネックになっているという。

 「長い目でみれば、保健事業を積極的に推進して健康寿命を延ばすことが医療費の減少につながるわけですが、現実的には保健事業費を増やすのは厳しい状況です」。

地域や関連団体との連携方法を模索
 「規模の大きな健保組合ではよい取り組みができても、職員数が少なかったり、専門職の人がいない健保組合ではなかなか難しいのが実情です。他の健保組合と共同で事業を行うとか、地域や関連団体との連携によってスタッフや予算のたりない分をカバーして何かできないかということで、いまその方法を模索しているところです」。

 健康日本21では、地域や関連団体と連携して効率的に運動を推進することが柱として盛り込まれている。
 健保連で平成12年、6健保組合、4事業所、4自治体に対して調査を行った結果、いくつかの具体的な連携パターンが見えてきたという。健保組合が市町村や地域の団体などが主催する健康教育や健康づくりイベントに参加するケース、地域にある保健福祉施設を住民と共同利用しているケース、地域と職域の専門スタッフが共同で健診・健康教育事業や合同勉強会などを行っているケース、被保険者の健康管理情報を他の保険者や地域で一貫して活用できる体制づくりをしているケースなどがあり、さらに企業城下町といわれる地域では、スタッフや施設を保有する健保組合や企業がその社会的資源を活用して地域との連携を総合的に推進しているという。
 その反面、独自に資源を持たない健保組合が地域と密接な連携を行っているケースは少なく、相互の情報交換もあまりなされていない現状が明らかになったとのこと。

 「今後は、資源のない小さな健保組合がどのように地域の資源を活用していけばよいのか、その方法を探ることが課題といえます」。

 引き続き連携方法に関する調査研究を行い、それらを踏まえて事業を進める予定だという。


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