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月刊誌「健康づくり」2002年5月号より

中央労働災害防止協会の取り組みについて

労働災害を防止するためのさまざまな活動を支援
 中央労働災害防止協会(中災防)は、昭和39年に労働災害防止団体法によって設立された法人で、事業主や事業主団体等が行う災害防止活動を支援している。会員は、業種別の労働災害防止協会、全国的な事業主の団体、地域別安全衛生推進団体、その他の労働災害防止団体で、ほかに五千余りの事業所等が賛助会員となっている。
 中災防では、広報・出版活動、情報の収集・提供、調査研究活動、専門技術についての支援、安全衛生教育の展開、国際協力活動、化学物質の有害性の調査など幅広い事業を行っており、その一環として働く人の健康づくり運動を推進している。健康確保推進部の吉道正夫部長と、同部企画課の三觜明ヘルスケア・トレーナーに話を聞いた。

働く人の心とからだの健康づくりを推進
 現在、中災防は国の提唱を受けて、THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)の普及に取り組んでいる。

労働災害防止活動写真  「昭和54年に、労働力人口の高齢化に伴う労働者の健康問題に対処するため、SHP(シルバー・ヘルス・プラン)が始まりました。これは中高年者を対象にした健康づくり運動です。その後、少子高齢化、生活習慣病の増加、ストレスの増大といった時代の変化に対応するため、若いうちから健康づくりに取り組み、さらには心とからだの両面からの健康づくりを目指すことが必要となってきました。そこで昭和63年に労働安全衛生法が改正され、健康保持増進措置が事業者の努力義務として定められました。それがTHPです」。

 中災防では、事業場で働く人の健康づくりを支援するために運動指導や保健指導等を行う専門スタッフの養成、事業場のTHP活動を支援する労働者健康保持増進サービス機関・指導機関の認定および登録を行っている。

 「これら支援機関等とともに、長年にわたり事業場でのTHP活動の定着に取り組んでいます」。

 THPは〈健康づくり計画〉〈健康測定〉〈健康指導〉〈実践活動〉〈実施効果の確認〉という5つのプロセスを回していくプランで、次のような内容になっている。
THP活動 ■健康づくり計画
 衛生委員会等において、職場の実態に応じた健康づくりを効率よく進めるため、目標や活動内容を定める。
■健康測定
 生活状況調査、医学的検査、運動機能検査等を行い、各人の生活習慣や健康状態をチェックする。
■健康指導
 健康測定結果や産業医による指導票に基づいて、運動・メンタルヘルスケア・栄養・保健の各専門スタッフが具体的な健康づくりのアドバイスを行う。理想的な生活習慣を押し付けるのではなく、各人がさまざまな健康づくりメニューの中から、関心をもって実行できるものを選んでもらう。
■実践活動
 各人が健康指導などを参考に、ウオーキング、リラクセーション、栄養バランスのよい食事など、日常的な健康づくり活動を実践する。
■実施効果の確認
 生活習慣が改善されると、社員はより健康で元気になり、職場に活気が広がる。効果の確認と見直しを行い、さらに次の計画へとつなげる。

 「THPで重視しているのは、生活習慣です。生活習慣がよければ今後も健康でいけると予測できますが、生活習慣が悪ければ、たとえいまは医学的データに問題がなくても、いずれ病気にかかる確率が高いといえます。ですから、生活状況調査を踏まえて行動変容を促すのがTHPの狙いです。生活習慣を変えるのはなかなか難しいことですが、職場全体で取り組めばかなり成果が上がります」。

 これまでにTHPを実施した企業の約8割が「よかった」、5割が「効果があった」と回答しているという。

 「こうした健康づくり指導によって、企業における医療費の負担や従業員の欠勤減少などがみられ、費用対効果についても好データが得られています。労使双方にとってメリットがあるわけです」。


立ち遅れている中小企業の取り組みを応援
 中小企業では、健康づくりの重要性やメリットを理解しても、新たな費用・スタッフ等、経営資源を投入することが困難な場合が多く、職場における健康づくりの実施率も低い状況にある。そこで厚生労働省では平成12年度から、中小企業における健康づくりの普及を図るため「THPステップアップ プラン」を開始した。

 「これには〈経営者健康づくり体験セミナー〉と〈職場健康づくり支援サービス〉の2つのプログラムがあります。体験セミナーは、中小企業の場合は経営者の考え方が大きく影響するので、まず経営者自身にTHPを体験してもらおうというものです。支援サービスは、健康づくりに積極的な企業に対して4年計画でTHPを支援します。これは、自主的に健康づくりを進めてもらうための土台づくりです」。

 中小企業の中にも、社員の健康が企業の資源であることを理解して、意欲的に健康づくりに取り組んでいる所もあるが、法律で定められている健康診断だけやればよいと考えている経営者も多いという。

 「健康診断の折に、運動負荷試験や運動機能検査などを付加して健康測定を行い、それに基づいて、ウオーキングを中心に運動習慣をつける、食生活の指導を行うというような形にすれば、それほど費用をかけなくても効果的な健康づくりができます」。

 吉道部長はこうアドバイスする。

関心が高まっているメンタルヘルス
 「経済・産業構造が変化する中で、仕事や職業生活について不安、悩み、ストレスを感じている労働者が増えており、自殺者数も年間3万人を超える高いレベルで推移しています。職場において、心の健康の保持増進を図ることが重要な課題になっています」。

 平成12年に国から「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(メンタルヘルス指針)が出され、中災防でもその普及事業に取り組んでいる。

 「平成13年、メンタルヘルス推進センターを設置し、全国各県でメンタルヘルス指針の普及のため、基礎研修を行っています。平成13年度は約6千人が研修を受けました。メンタルヘルス対策に意欲のある事業場を選定し、そこに専門家を派遣して行うメンタルヘルス指針推進モデル事業も、各県で実施しています。また、年1回、心の健康づくりシンポジウムを開催しています」。

 一般的な健康づくりは進んでいる大企業を中心に、メンタルヘルスへの関心が高まっているという。

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