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月刊誌「健康づくり」2003年5月号より

日本予防医学協会の取り組みについて
 日本予防医学協会は、1960年に創立された組織で、62年には全国に先駆けて「胃集団検診」を実施して注目を浴びた。現在は、疾病予防から健康管理、健康教育、セルフケアをサポートする健康支援まで、健康関連の事業を幅広く展開している。

設立当初の検診事業から健康支援事業へ
 日本予防医学協会は、設立当初の1960年代には検診事業にウエートを置いていたが、その後、時代の流れに対応して、健康管理、健康教育、健康支援へと事業内容を拡充。90年代には、パソコンによる健康管理支援システム〈ヘルシー〉やライフスタイル診断の開発、全国的な健康サポートネットワーク事業などに取り組んでいる。
 日本予防医学協会の事業や『健康日本21』への取り組みについて、大河内満理事、相坂修一教育事業推進室長代理に話をきいた。
 「かつては予防医学の課題は結核などの感染症でしたが、生活習慣病の増加や人口の高齢化に伴って、予防医学の考え方も、疾病予防から健康管理、健康教育へと変わり、さらに、セルフケアをサポートする健康支援へと変わってきています」
 生活習慣病や高齢化に伴う痴ほうや寝たきりを防ぎ、充実した人生を送るためには、ライフスタイルを自ら改善して健康増進を図るセルフケアが重要になる。
 「健康の概念や健康に対するニーズは、時代とともに変化しますから、当会の事業もそれに応じて変わってきています。現在は、〈健康診断・環境測定事業〉〈健康増進事業〉、それに価値ある情報を提供する〈健康情報事業〉の三つを柱に、総合的な健康支援機関を目指しています」

企業の健康管理業務をトータルで受託
 具体的な事業内容としては、健康診断、事後指導、健康教育、健康イベントの企画・実施など、企業の健康管理業務を一括して受託するケースが多いという。
 「社員の健康管理を適切に行うためには、健診などのデータを一元管理することが重要です。しかし、大きな企業ですと、本社だけでなく全国各地に支社や事業所があり、転勤による異動がありますから、この作業はなかなか大変です。また、健診は行っても事後指導までは手がまわらないというところもあり、外部に委託する企業が増えています」
 日本予防医学協会では、全国2,500ヵ所の医療機関と提携しているほか、保健師・管理栄養士・カウンセラーなどの専門職、フィットネスクラブなどの専門機関のネットワークを整備している。
 「健診は私どもでも行いますが、全国各地に提携病院がありますから、どこででも受けられます。そして、そのデータは私どもが一括して管理します。再検査や精密検査が必要な人には病院を紹介し、要観察者には地元の保健師を派遣して保健指導も行います」
 また、パソコンにIDを入れれば自分のデータが見られるシステムになっており、セルフケアへの意欲を高める効果があるという。
 「生活習慣改善のためのイベントもいろいろ実施しています。最近では、WHOの〈世界禁煙デー〉参加イベントとして、〈らくらく禁煙コンテスト〉を行っています。これは、通信制の禁煙プログラムを用いて禁煙を支援するものです。いきなり禁煙というのではなく、最初の2週間はたばこの害について学んだり、自分の喫煙習慣を分析するなど禁煙にむけて準備をし、それに続く4週間で完全に禁煙してもらうというプログラムです」

メンタルヘルス対策が重要な課題
〈らくらく禁煙コンテスト〉では成功者に証書と図書券が贈呈され、抽選でプレゼントも
〈らくらく禁煙コンテスト〉では成功者に証書と図書券が贈呈され、抽選でプレゼントも
  「不況の中で雇用形態が変化したり、質量ともに作業負荷が増しています。結果として、うつ病とまではいかなくても、ストレス性の疾患を抱えている人が増加しています。たとえば、製薬メーカーの営業職などの場合、一カ月に一度しか出社しないといった勤務形態は珍しくありません。パソコン相手にビジネスを行っているわけで、社員間のコミュニケーションが希薄になりがちですから、どうしてもストレスがたまります」
 心の健康は体の健康と密接に関係しているだけでなく、放置すると、労働意欲の減退、仕事上のミスや事故につながる恐れがある。そのため、リスクマネジメントの一環としてメンタルヘルス対策を実施する企業が増加しているとのこと。
 「当会では、東京メンタルヘルスアカデミーと共同で〈メンタルサポートネット〉を開設しています。主要都市のカウンセリングセンターと提携し、最寄りの都市で面接カウンセリングが受けられますし、電話やメールでのカウンセリングやストレス診断、組織診断も行っています」

『健康日本21』市町村計画の策定をサポート
 日本予防医学協会では、新たな事業の一環として、『健康日本21』の市町村計画策定をサポートしている。
 「一つは〈ヘルスアセスメント事業〉です。市町村の住民の健康状態を調査・分析するもので、これは健康計画を立てる際の基礎資料となります。また、住民の集まりなどを開いて要望をきき、地域のニーズに合わせた計画を立てるためのコーディネートなどもさせていただいています。計画がまとまった時点で、住民の方々と一緒に町づくりや環境づくりをやっていきたいと考えています」
 この事業は、2001年から取り組んでいる。
 「もう一つの〈ヘルスアップモデル事業〉は昨年から始めたものです。健康づくりに関して、どういう介入をすれば、どういう効果が出るのかについては、あまりエビデンスがそろっていないのが実情で、3年間実施して、最も効果的な介入の手法や期間を見極めたいという試みです」
 この事業は現在、青森県大鰐町で行われている。こうした新たな事業が進められている背景には、これまでの健診中心の手法では、多様化する健康ニーズにうまく対応できないという問題がある。
 「日本の社会は、疾病予防に対する対応はかなりできていますが、健康づくりに対する対応はまた別です。健康づくりにおいてはQOL(生活の質)を上げることが重要なポイントで、それは個人の生き方と深くかかわっていますから、多様で一律にはいきません。それにどう対応していくかが、これからの課題といえます」

〈健康社会フォーラム〉や各種の研究会を開催
産業、地域、学校といった枠を超えて、討論と相互交流を行う〈健康社会フォーラム〉
産業、地域、学校といった枠を超えて、討論と相互交流を行う〈健康社会フォーラム〉
 「一人ひとりが、その人らしく、いきいきと生きる…。そんな“健康社会”を実現するためには、さまざまな立場の人が知恵を出し合うことが必要です。そうした“場づくり”として93年から〈健康社会フォーラム〉を開催しています。産業、地域、学校といった枠を超えた討論と相互交流を通して、新たな情報と技術を見出し、それを社会に提案していきたいと考えています」
 このほか、産業保健や地域保健の健康管理担当者を対象に〈健康管理研究会〉〈健康学習研修会〉〈ヘルスカウンセリング研修会〉などを開催している。これらの研究会やセミナーは年間、50数回にのぼり、受講者は5,000人に及ぶという。


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