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月刊誌「健康づくり」2003年6月号より

日本栄養士会の取り組みについて
 日本栄養士会は、管理栄養士・栄養士を会員とする職能団体で、会員数は約56,000人。栄養士の資質の向上を図り、国民の健康・福祉の増進に寄与することを目的に、栄養に関する調査研究、知識の普及、研修会などの開催、機関誌の発行などの事業を行っている。

栄養士法の改正に伴い専門知識や技術の高度化を図る
 日本栄養士会の前身は、昭和20年に設立された「大日本栄養士会」で、その後34年に「日本栄養士会」と改称し、社団法人として認可された。原正俊専務理事に、日本栄養士会の活動や『健康日本21』への取り組みについて話を聞いた。
 「平成12年に栄養士法の一部が改正され、2002年から施行されました。これまで登録制だった管理栄養士の資格が免許制になり、業務内容が明確化されました。
 国民の健康維持・増進に関して、管理栄養士や栄養士の果たす役割の重要性が認められたということで、責任も重くなったと考えています。今回の改正では、高度な専門知識や技術を持った管理栄養士の養成が求められていますから、現在、それに向けた取り組みを行っています」
 養成施設での教育科目の見直しによる徹底教育に期待するとともに、卒後教育も充実を図る方針だという。

生活習慣病の予防と「食育」問題の取り組む
9月17日に静岡市で開催された「がん征圧全国大会」の模様。同大会では富永久雄専務理事が禁煙宣言を行った。
9月17日に静岡市で開催された「がん征圧全国大会」の模様。同大会では富永久雄専務理事が禁煙宣言を行った。
 『健康日本21』では、9つの領域で70の目標が設定されている。「栄養・食生活」はそのトップに挙げられており、適正体重を維持する人の増加、脂肪エネルギー比率の減少、食塩摂取量の減少、野菜の摂取量の増加、カルシウムに富む食品の摂取量の増加などが目標として揚げられている。
 「生活習慣病の発症には食生活が深くかかわっていますから、予防には食生活の改善が欠かせません。ことに、糖尿病対策は重要です。糖尿病は、疑いのある人まで含めると1,300〜1,500万人に上ります。糖尿病の95%は肥満や運動不足などによって起こるインスリン非依存型ですから、食生活や運動に注意すれば防ぐことが可能です」
 日本栄養士会では、適正体重の認識とコントロールを目指して〈太るもやせるも食事が基本〉というキャンペーンを展開している。「肥満は、糖尿病だけでなく、さまざまな生活習慣病の誘因になります。適正体重を維持することは健康管理の基本ですが、自分の適正体重を知らない人が意外に多く、BMI(体格指数)の計算方法〔体重(kg)÷身長(m)2〕を知っている人は少数です。まず、自分の適正体重を認識してほしいということで、このキャンペーンを行っています」
 健康に対する関心が高い割には、基本的な部分が抜け落ちているらしい。日本栄養士会では以前から、栄養成分表示の普及に取り組んでいるが、表示されている数字の持つ意味を理解できない人が多いため、思うように進まないという。
 「600キロカロリーという数字を見て、一日の必要エネルギー量の約三分の一に当たるということは分かるようになってきましたが、脂質何グラム、タンパク質何グラムといった表示を見ても、それがどの程度の量なのか判断できない人がほとんどです。国民の多くが栄養に関する知識を持ち、表示を見て取捨選択できるようになれば栄養成分表示ももっと普及するはずで、教育の必要性を痛感しています」
 生活習慣病の予防と並んで、いま力を入れているのが「食育」問題である。
 「子どもたちの食生活が大変乱れており、憂慮すべき状況です。幼児期は生活習慣の基礎をつくる時期ですから、食に関しても、食べることの意味を理解させ、自立的に食生活を営む力を育てることが大切です。いまは、お金を出せば好きな食べ物が買える時代なので、なかなか難しい問題ですが……」
 日本栄養士会では昭和55年から、WHOが提唱する「世界保健デー」の4月7日に〈健康づくり提唱のつどい〉というイベントを開催しており、ことしは〈食が育む子どもの未来〉と題して食育を取り上げた。今後も食育問題に積極的に取り組んでいく方針で、食育問題検討会を設置している。

住民の相談に応じる栄養ケア・ステーション
 『健康日本21』の推進を図るために、日本栄養士会では全国を三ブロックに分けて、〈地区別健康づくり・栄養行政担当者及び関係者合同研修会〉を開催している。
 「当会の会員には、保健所や市町村保健センターに勤務している人が多数おり、『健康日本21』の地方計画づくりに参画しています。それをバックアップするために、栄養・食生活関係者の参加を得て、相互理解と情報交換の場として、研修会を開いています」
 この事業は平成13年度から始まり、〈導入〉〈実施〉〈評価〉と続け、今年度で終了する。具体化した事業としては〈栄養ケア・ステーションモデル事業〉がある。
 「一次予防の観点から、個々人に対応した適切な指導を行い、住民の栄養改善や健康づくりの推進を図るもので、管理栄養士や栄養士が住民の相談に応じます」
 こちらはモデル事業として昨年スタートし、群馬、石川、滋賀、大阪、大分で実施された。都道府県栄養士会によって多少異なるが、次のような事業内容になっている。
◆健康教育のための栄養診断、栄養相談・指導、栄養教育など
◆出前講座、通信(電話など)講座・IT講座
◆病院などと連携しての訪問栄養食事指導
◆介護保険施設と連携しての在宅栄養指導
◆市町村・社協との連携による訪問配食サービス
◆市町村や企業が実施する基本健康審査や健康診断とリンクさせ、生活習慣病予備軍の指導強化に当たる
 「この事業は始まったばかりで、まだ終了報告書が出ていませんが、その結果を踏まえて事業を進めていく予定です」

健康的な食生活の基本は一日三〇食品とること
 がんの予防にはβ−グルカンがいい、目の疲れにはアントシアニンがいい…などなど、食と健康に関する情報が満ちあふれ、手軽に栄養補給できるサプリメントが人気を集めている。健康を守るためには何をどう食べればいいのか迷う人が多いのではないだろうか。原専務理事は「やはり、一日三〇食品とるのが一番いいでしょう」とアドバイスする。国民栄養調査の結果をみると、三〇食品とれば一日に必要な栄養素が過不足なく摂取できているという。
 原専務理事によると、ちょっと工夫すれば三〇食品とるのはそれほど難しくないとのこと。一番のポイントは、主食を変えること。朝はパン、昼はご飯、夜は麺類という具合に主食を変えれば、当然おかずも変わり、自然に食品数が増える。もう一つは、料理にあしらいを添えることだという。
 「たとえば、サンマの塩焼きを食べるときには、青ジソを敷いてダイコンおろしをのせ、レモンでも添える。青菜のお浸しには花かつおや針海苔を散らす。そうすれば見た目も美しく、食品数も増えます。料理を楽しむといいますか、そういう気持ちの余裕を持つことが、からだの健康だけでなく、心の健康につながります」
4月7日の世界保健デーに行われた〈第24回健康づくり提唱のつどい〉
4月7日の世界保健デーに行われた〈第24回健康づくり提唱のつどい〉
4月7日の世界保健デーに行われた〈第24回健康づくり提唱のつどい〉
 まず食品から栄養をとり、どうしても不足する場合にサプリメントを利用すべきだという。サプリメントは手軽だが、脂溶性ビタミンなどは過剰症の心配があり、薬剤を服用している場合には相互作用が出る恐れもある。
 サプリメントなどについても、栄養士が適切な助言を行えるようにしたいということで、卒後教育の一環として〈特定分野専修コース〉を設け、専門家を養成することも検討中だという。

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