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月刊誌「健康づくり」2003年8月号より

日本糖尿病財団の取り組みについて
 日本糖尿病財団は、糖尿病学の発展向上に寄与することを目的に、平成3年に設立された。糖尿病に関する調査研究に対する助成、糖尿病についての正しい知識の普及啓発、印刷物の刊行、国際交流などの事業を行っている。

公募による研究助成は約150件に上る
 「糖尿病関係の組織としては古くから、日本糖尿病学会、それに患者さんの団体である日本糖尿病協会があります。唯一欠けているのが財団ということで、平成3年に日本糖尿病財団が設立されたのです。以来、国の内外で行われる研究や学術集会に対して助成を行うとともに、糖尿病の知識の普及のための集会を主催してきました」
 金澤康徳理事長によると、日本糖尿病財団が活動を始めたのは、ちょうどバブル経済が崩壊し始めた時期で、財団の活動を維持・拡大するのはなかなか大変だったという。
 財団設立とともに開始された、公募による研究助成は、これまでに約150件に上る。毎年、応募が50〜60件あり、その中から11〜2件を選考して助成している。
 「年間予算は約1,000万円で、一件100万円前後の助成を行っています。この研究助成を受けた研究者の約四分の一が現在、教授になって活躍しておられることが私どもの自慢です。見る目があったといいますか、優秀な研究者を選んできたことの証しといえるのではないでしょうか。選考委員長の森亘先生(日本医学会会長)をはじめ、選考委員会の方々の慧眼【けいがん】によるものです」
 糖尿病の制圧は世界共通の課題になっており、国際的な共同研究、情報の交換、国際会議の開催など、国際交流が活発に行われている。日本糖尿病財団では、こうした国際共同研究や国際会議なども支援している。
 「平成6年には神戸市で行われた〈第十五回国際糖尿病会議〉を日本糖尿病学会と共催し、その成功に関与できました。これは当財団にとって記念すべき事業です。日本の糖尿病研究の水準は高く、アジア・オセアニア地区の先進国として期待されていますから、今後も、こうした国際交流に積極的に貢献していきたいと考えています。

糖尿病の知識の普及を図る予防キャンペーンを展開
 糖尿病の研究助成とともに、日本糖尿病財団の事業の柱になっているのが、糖尿病に関する知識の普及・啓発活動である。
 毎年、東西2ヵ所で〈糖尿病予防キャンペーン〉を展開している。2002年は、東日本地区は郡山市、西日本地区は松山市で行った。2003年は長野市と福岡市で行う予定になっている。「地元の先生方にお願いして糖尿病についての講演を行い、希望者には血糖値の測定も行っています。ただ、参加者は糖尿病の患者さんやその家族の方が多いようです。できれば、もっと一般の方に参加していただき、糖尿病についての知識を深めて予防につとめていただきたいと思っているのですが…」
 糖尿病は、糖質の代謝に必要なインスリンというホルモンが不足したり、働きが悪くなったりして、血液中のブドウ糖(血糖)の量が増えることによって起こる。高血糖の状態が続くと全身の血管や神経が侵され、網膜症、腎症、神経障害など深刻な合併症を引き起こす。網膜症で失明する人は年に5,000人、腎不全となって人工透析を始める人は12,000人に及ぶ。また、糖尿病は動脈硬化を進行させ、心筋梗塞【こうそく】や脳梗塞の原因にもなる。
 「糖尿病というのは、痛くもかゆくもなく、がんや心筋梗塞のようにすぐ死につながるわけでもありません。そういう意味で大変分かりにくい病気ですから、その怖さが理解しにくいようです」
 日本糖尿病財団では、糖尿病予防や患者の管理向上に関する冊子、出版物、ビデオの制作も行っている。
 「毎年、11月第1週の〈国際糖尿病週間〉には、全国的にさまざまな行事が展開されます。私どもでは、そうしたイベントのサポートも行っています」

日本人は省エネ型の体質で糖尿病になりやすい
 平成9年に厚生省(現・厚生労働省)が行った疫学調査によると、糖尿病が強く疑われる人は約690万人、糖尿病の可能性を否定できない人は約680万人。両方を合わせると1,370万人に上り、日本人の十人に一人は糖尿病またはその予備軍ということになる。かつては結核が国民病といわれたが、いまは糖尿病が国民病になっている。
 「日本人をはじめ東洋系の人間は、長年にわたって飢饉に苦しみながら生きて抜いてきたという歴史があります。その結果、あまりエネルギーを使わずに生きられる素質を持った人が生き残ってきたと考えられます。いってみれば日本人は省エネ型の体質で、いまのような豊かな時代には、それが不利な形で出てくるということです」
 糖尿病には1型と2型があり、日本人の糖尿病の95%は2型である。2型糖尿病は、遺伝的な素質に、食べすぎや運動不足による肥満が加わって発症すると考えられている。
 「たとえ糖尿病の素質があっても、発症しなければいいわけです。そのためには、ほどほどに食べて、ほどほどに運動することです。体重は、20歳のころの体重がベストです。それ以降は脂肪が増えるだけですから。BMI(体格指数)だと、21から22の間くらいになるはずです。20歳のころの洋服がずっと着られるようだと理想的です」
 糖尿病にとって肥満が大敵なのは、脂肪組織からインスリンの働きを悪くする阻害物質が分泌されるためだが、脂肪組織からは動脈硬化を防ぐ物質なども分泌されるので、やせすぎもよくないという。金澤理事長は「何事もほどほどにといいますか、バランスが大切です」とアドバイスする。

糖尿病対策には一・五次予防が効果的
昨年、福島県郡山市で開催された〈糖尿病予防キャンペーン講演会〉。会場には血糖値や血圧の測定コーナーが設けられた
昨年、福島県郡山市で開催された〈糖尿病予防キャンペーン講演会〉。会場には血糖値や血圧の測定コーナーが設けられた 昨年、福島県郡山市で開催された〈糖尿病予防キャンペーン講演会〉。会場には血糖値や血圧の測定コーナーが設けられた

糖尿病について分かりやすく解説した冊子を制作。キャンペーン会場などで配付している

 

 

糖尿病について分かりやすく解説した冊子を制作。キャンペーン会場などで配付している

 『健康日本21』では、糖尿病が生活習慣病の代表として重点施策に盛り込まれている。
 「『健康日本21』に関しては、計画づくりの段階で私や赤沼安夫先生(日本糖尿病学会の前理事長)が参画し、いろいろ意見を取り入れていただいたという経緯があります。『健康日本21』では一次予防に重点がおかれていますが、糖尿病に関していえば、一・五次予防が効果的だと考えています」
 糖尿病は、初期の段階では自覚症状がないため、健康診断を受けて血糖値がちょっと高いことが分かっても放置する人が多いとのこと。「血糖値が高めの人は、長い目で見れば糖尿病になる素質を持つ人といえます。ですから、こうした境界域の人に対しては生活改善指導を積極的に行い、それを守っているかどうか定期的に確認する作業が必要です。糖尿病予防のためには、健康診断や糖尿病健診の受診率を上げるとともに、事後指導をきちんと行うことが重要です」
 もちろん糖尿病にならないのが一番だが、たとえ糖尿病になっても、早期に発見して治療を続ければ、普通の人と変わらない生活が送れるという。
 「糖尿病は、完治することはありませんが、早期に発見して治療を継続すれば、合併症を防ぐことができます。合併症さえ出なければ、生活の質を落とすことなく長生きできます。糖尿病になる人は、省エネ型で長生きするというのが本来の姿ですから」
 “一病息災”という言葉があるように、今は糖尿病を治療しながら長生きする時代だという。

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