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月刊誌「健康づくり」2003年9月号より

健康・生きがい開発財団の取り組みについて
 健康・生きがい開発財団は、中高年者の健康づくりの増進と自立を助長することを目的に平成3年に設立された。健康や生きがいづくりを支援する人材の養成や資格認定、健康生きがいづくりに関する啓発・調査研究などの事業を行っている。

「人生八十年時代」を迎え定年後の生き方が課題
 「かつては定年後の人生が短かったため、老後の生き方はあまり問題にされませんでしたが、いまは『人生八十年』という時代です。定年を迎えてから20年以上の時間が残されているわけで、長い老後をどう生きるかが大きな課題になっています」
 健康・生きがい開発財団の松本吉平常務理事はこう語る。
 定年と同時に社会とのつながりを絶たれ、生きがいや生活のはりを失うサラリーマンが少なくない。家に閉じこもりがちで、家族からもうとんじられ、「粗大ゴミ」「ぬれ落ち葉」などと称されて社会問題になった。
 「第二の人生を充実したものにするためには、生きがいを持って前向きに生きることが大切です。特に、一定の役割を担い、人の役に立っているという意識を持つことが心身の健康にいいようです。米国では『プロダクティブ・エイジング』という考え方が注目されています。年を取ったら弱者になって支えられる側に入るのではなく、これからの高齢者は支える側になるべきだというものです」
 もちろん誰もが、生きがいをみつけて前向きに生きたい、社会の役に立ちたいと考えているはずだが、どうすればいいのか分からないというのが実情だろう。
 「私どもでは、そうした中高年者の健康や生きがいづくりを支援するために、さまざまな事業を行っています。中高年者の健康増進と自立をサポートすることによって、明るく活力ある長寿社会の実現を目指しています」

健康や生きがいづくりを支援する人材を養成
 健康・生きがい開発財団の事業の中心になっているのが、健康や生きがいづくりを支援する人材の養成と資格認定である。
 平成4年から養成を始めた「健康生きがいづくりアドバイザー」(以下アドバイザー)は、サラリーマンやOBを対象に、健康や生きがいづくりに必要な知識、情報、機会を提供するとともに、その相談にのる専門職。健康や生きがいづくりに関する資格には、健康運動指導士、社会福祉士、レクリエーション指導者などいろいろあるが、いずれも専門分野に限られており、中高年者の健康と生きがいづくりを一体としてとらえた資格はない。
 「アドバイザーは、中高年者の在職中および退職後における健康生きがいづくりを企業や地域で支援するコンサルタントであり、ほかの機関や専門の職種とをつなぐコーディネーターでもあります」
 延べ11日間、約80時間の研修を受け、資格審査試験に合格すると資格を取得できる。研修内容は、生きがい、健康、福祉、家族、地域社会、家庭経済、就労、援助技術など多岐にわたっている。受講者は、企業の人事部員、自治体の高齢者施策担当者、フィットネスクラブの指導員など、中高年者の健康や生きがいづくりに携わっている人が多いが、定年後のサラリーマンや家庭の主婦など一般の人もかなりいるとのこと。
 「自分自身の生きがいをみつけるために受講する人もいますし、ボランティア活動をするために資格を取りたいという人もあり、動機はさまざまです」
 現在までに約3,200人がアドバイザーの資格を取得している。アドバイザーの地域組織も37都道府県で設立され、地域に則した活動を展開している。松本常務理事によると、アドバイザーには一芸に秀でた人やほかの資格を併せ持つ人が多く、その特技を生かして活動しているケースが多いという。
 平成10年度からは、新たに「生きがい情報士」の養成を開始した。
 「アドバイザーは50〜60歳代の人が多く、アドバイスする対象者も同年代です。しかし、第二の人生にスムーズに移行するには、もっと早い時期から社会参加や生涯学習などに取り組むことが望ましいということで、生きがい情報士の養成を始めました。この資格は若い人を対象にしています」
 生きがい情報士は、高度情報社会に対応し、コンピューター技術を駆使して幅広い生きがい情報の収集・管理を行うのが特色。中高年者に必要な情報提供や関連機関などへの紹介だけでなく、ライフプランの提供も行う。
 全国の短大や専門学校の介護福祉科、情報処理科、医療福祉科などにカリキュラムを導入し、所定の科目を履修して財団の認定試験に合格すると資格を取得できる。現在、養成指定校は約60校。これまでに約3,000人が生きがい情報士の資格を修得しており、フィットネスクラブ、医療機関、福祉施設、企業、自治体などで活動しているという。
 「いま、『健康日本21』という大きなプロジェクトが動き出しています。『健康日本21』の趣旨は、自分の健康は自分で管理して健康寿命を延ばしましょうということですから、アドバイザーや生きがい情報士は実践の場でいろいろお手伝いできます。ことに、重要課題の一つに掲げられている〈こころの健康〉は生きがいと深くかかわっています。私どもの事業そのものが『健康日本21』に連動するものですが、従来の活動をより強化していきたいと考えています」

健康生きがいづくり活動に関する啓発や調査・研究に取り組む
〈健康生きがいづくりアドバイザー〉養成研修会。毎回、40〜50人の受講者がある
〈健康生きがいづくりアドバイザー〉養成研修会。毎回、40〜50人の受講者がある
アドバイザーには一芸を持つ人が多く、知識や情報を提供するだけでなく、特技を生かして実技指導も行うアドバイザーには一芸を持つ人が多く、知識や情報を提供するだけでなく、特技を生かして実技指導も行う
アドバイザーには一芸を持つ人が多く、知識や情報を提供するだけでなく、特技を生かして実技指導も行う
 「中高年者が生きがいと健康づくりを実践できる機会や場を積極的につくり出すことが必要ですから、2002年、長寿社会開発センターの助成を受けて〈生きがいと健康づくりワークショップ〉を都内二ヵ所で開催しました」
 多様化するニーズに応えられるように多彩なプログラム(囲碁、絵手紙、ガーデニング、アマチュア無線、太極拳、健康体操、遺言書の書き方など)を用意し、参加者に実際に体を動かして体験してもらった。話を聞くだけのセミナーやシンポジウムと違って活気があり、大変好評だったという。
 「生きがいは百人百様です。私どもでは、生きがいは与えられるものではなく自ら実現していくものという視点で、それぞれの方の生きがいづくりをお手伝いしています」
 健康・生きがい開発財団では、健康や生きがいづくり活動に関する調査・研究にも力を注いでいる。
 「アドバイザーの養成事業が開始されてから10年が経過しました。時代の早い流れに対応していくためには、知識や技術をリフレッシュする機会を設ける必要があるということで、2002年、アドバイザーの資質向上を図る研修のあり方について検討を行いました。これは、厚生労働省の老健事業などの補助を受けて行った事業です」
 アドバイザーを対象にアンケート調査を行ったところ、生きがいづくりに関連する心理学・老年学などより専門的な知識の習得、『健康日本21』を含めた介護予防の考え方の理解、実践的なカウンセリング技術の習得などに対する要望が多かったという。
 「調査結果を踏まえて研修内容を検討し、3月に報告書をまとめました。向上研修は2003年度から実施に移せると思います。『健康日本21』についてもカリキュラムの中に組み込み、その法的基盤である『健康増進法』も含めて、各分野の専門家に解説してもらう予定です」
 このほかに、健康・生きがい開発財団では〈介護予防と生きがい活動支援に関する調査研究〉なども行っている。
 これらの事業は、できるものについては今後も継続していく方針だという。


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