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月刊誌「健康づくり」2003年11月号より

日本対がん協会の取り組みについて
 日本対がん協会は、民間の「がん対策推進運動」の母体として1958年に設立された。がん知識の普及・啓発、がん検診の推進を軸に、がん無料相談、検診施設の整備、専門家の育成等の事業を行っている。

40年以上にわたって日本のがん征圧運動をリード
 1981年以来、がんは死亡原因の第一位を占めており、2002年のがんによる死亡者は約304,000人。「死者の三人に一人はがん死」という時代を迎えた。高齢化の進行などから、がんは今後もさらに増え続けると予測されている。
 日本対がん協会は、がん対策を推進する民間組織としては最も古い歴史を持ち、40年以上にわたって日本のがん征圧運動をリードしてきた。日本対がん協会の活動や「健康日本21」への取り組みについて、村田歓吾理事に話を聞いた。
 「日本対がん協会は1958年に、国のがん対策を民間の立場から補完することを目的に、医学界、日本医師会、厚生省(当時)、政界、財界の支援を得て、朝日新聞社の創刊80周年記念事業の一環として創設されました。活動資金のほとんどは、企業や個人からの寄付によってまかなわれています」
 東京の本部のほか、全国46都道府県に支部があり、がん知識の普及とがん検診を二本柱に活動を展開してきた。
 「2000年に、『健康日本21』も視野に入れて『21世紀の指針』を策定し、〈禁煙の勧め〉〈検診の推進〉〈患者・治癒者のケア〉の三つを今後の活動の重点目標に掲げました。禁煙の勧めと検診の推進は、『健康日本21』と合致する内容です」

がん征圧にとって“21世紀は予防の時代”
 20世紀後半には、がんの本体解明が進み、診断・治療技術の進歩によって治癒率が改善した。早期発見・早期治療を行えば、もはや“死の病”ではなくなりつつある。しかし、21世紀に入っても当分の間は、画期的な新薬の開発や進行がんに対する治療法の確立は期待しにくいため、やはり生活習慣を改善する一次予防、検診による早期発見・早期治療の二次予防が中心になるという。
 「がん征圧にとって“21世紀は予防の時代”といわれています。がんに対しては一次予防、二次予防が効果的であることを広く知ってもらうことが重要になります」
 日本対がん協会では、がんに対する最新情報を盛り込んだパンフレットやチラシを配付し、ホームページで情報提供を行うほか、毎年9月を「がん征圧月間」に定め、組織をあげて普及・啓発活動を展開している。期間中には中心行事である「がん征圧全国大会」が開催されるのをはじめ、全国各地で講演会、シンポジウム、がん相談、街頭広報活動などが幅広く行われる。
 「これまで、がんへの取り組みは予防と治療が中心でしたが、今後は患者や治癒者のケアにも積極的に取り組む方針です。医療技術の進歩や早期発見・早期治療によって治癒する人が増えています。生存率の向上、QOL(生活の質)の改善を図るとともに、患者や治癒者の生きがいにも目を向けます。がん経験者とともに、がんが“死の病”ではなく、立ち向かって生きる病であることを訴えていきたいと考えています」
 患者治癒者に対する取り組みとして、がん相談にも力を入れている。厚生労働省委託のがん無料相談は、本・支部で定期的に行われており、毎年約10,000人の相談に応じている。本部では従来の医師との面談による相談に加えて、独自事業として昨年から専門医による電話相談を開始した。2003年9月に実施した4日連続の「乳がん相談」では希望者の電話が殺到して応じきれず、需要の大きさを実感させられたという。

全国大会で禁煙宣言を発表禁煙運動を強力に推進
9月17日に静岡市で開催された「がん征圧全国大会」の模様。同大会では富永久雄専務理事が禁煙宣言を行った。
9月17日に静岡市で開催された「がん征圧全国大会」の模様。同大会では富永久雄専務理事が禁煙宣言を行った。
 「喫煙は、がんをはじめ、さまざまな生活習慣病の大きな危険因子で、禁煙は一次予防の要といえます。残念ながら、日本では税収の問題やたばこ生産者の保護などから、禁煙が国の政策として本格的に取り入れられていませんが、当協会では、効果的ながん予防の第一歩として禁煙運動を推進します」
 特に、若年層の喫煙防止、子どもへの影響が大きい女性の禁煙を重視するという。
 「そのためには、まず自らが禁煙に取り組むことが求められます。WHO(世界保健機関)で『たばこ対策枠組み条約』が採択され、『健康増進法』が施行されたのを機に、9月のがん征圧全国大会で、組織として禁煙宣言を行いました」
 協会関係者や協会施設の禁煙を推進するとともに、たばこ製品の広告規制や警告文書の強化、自動販売機の規制強化、たばこの販売価格引き上げなどを関係機関に働きかける。「たばこの販売価格を喫煙対策先進国並に引き上げても税収が落ち込む心配はない、との専門家の試算が出されています。当協会でも、値上げによる増収、増税分の一部を喫煙対策推進の費用に充てるよう提言しています」


検診受診者が2億人を突破がんが発見された人は20万人
 「精度の高いがん検診の普及と受診者を増やすことが、がんの死亡率減少につながるということで、検診の推進を重点目標に掲げています。乳がん検診でのマンモグラフィ(乳房X線撮影)検査の普及や、肺がん検診へのX線CT利用も検討するなど、技術革新の成果を取り入れて検診の充実に努め、受診者数の増加を図ります」
 日本対がん協会の多くの支部では、がん検診を実施している。協会発足以来の受診者総数は、2001年度に2億人を超え、がんが発見された人は20万人に上るという。2003年度は、「がん検診受診者2億人突破記念事業」を行っており、その柱として「乳がん征圧キャンペーン」を展開している。
 「乳がんをなくす ほほえみ基金」を設けて、集まった資金をマンモグラフィ検診機器の整備、患者・治癒者の活動支援、広報活動やがん相談、マンモ技師の研修会(マンモグラフィ精度管理中央委員会と共催)など、乳がん対策に重点的に使用する。
 乳がんに力を入れるのは、乳がんが増加していることに加えて、乳がんに対する一般の関心が高まっているためだという。
専門家の育成事業にも積極的に取り組む
がん知識の普及を図るために、パンフレットやチラシなどを制作・配付している
がん知識の普及を図るために、パンフレットやチラシなどを制作・配付している
 「がん検診の質を高め、精度管理の向上を図るため、検診従事者をはじめとする支部職員の研修会を開催しています。これは、各支部で大変好評を博している事業です」
 日本対がん協会では、がん専門医の育成にも取り組んでいる。1970年から研修医制度を設け、がん専門病院で知識や技術を磨く若手医師に奨学金を出している。これまでに奨学金の給付を受けた医師は100人を超える。近年は、肺がんやマンモグラフィの読影医の養成が急務になっているという。
診療放射線技師研修会の模様。フィルムを見ながら熱心な討議が行われる
診療放射線技師研修会の模様。フィルムを見ながら熱心な討議が行われる
 「がんに関する調査研究に対しても助成を行っています。各地域での調査研究に重点を置いており、毎年4〜5千万円を全国の支部を通じて支出し、各地のがん研究や研修を支援しています」
 また、〈日本対がん協会賞〉を設け、検診活動に功績のあった個人や団体を表彰している。2001年には特別賞として、将来性のあるテーマに取り組んでいる個人または団体に贈る〈朝日がん大賞〉を新設した。授賞式は毎年九月の全国大会の席上で行われる。

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