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月刊誌「健康づくり」2004年3月号より

全国老人保健施設協会の取り組みについて
 全国老人保健施設協会は、老健施設の向上発展を図るために設立された組織で、老健施設の95%が加入している。施設職員を対象にした各種研修、高齢者ケアのあり方についての調査研究、広報出版などの事業を行っている。

病院から家庭への復帰施設として誕生
  老健施設は、昭和63年に「老人保健施設」としてスタートし、平成12年に介護保険制度が導入されたのに伴って「介護老人保健施設」と名称を変更した。
 現在、全国に約3,000の老健施設がある。全国老人保健施設協会(全老健)はその全国組織で、会員数は約2,900。95%という高い加入率を誇る。老健施設の役割と機能、全老健の活動、「健康日本21」との関係について、若月健一副会長に話を聞いた。
 「老健施設は、病院から家庭への復帰施設として誕生しました。退院後、すぐ家庭で介護するのは難しい人を一時的におあずかりしてリハビリを行い、自立した生活ができるように支援する施設で、医療と福祉を統合した総合的なケアサービスを提供します」
 介護保険が適用される施設には、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の三つがある。老健施設はその中間に位置し、医療と福祉の両方を提供するとともに、作業療法士あるいは理学療法士をおいてリハビリを行うことに特色がある。
 老健施設ではこうした施設ケアのほか、在宅ケア支援の拠点として、短期入所療養介護(ショートステイ)、通所リハビリ(デイケア)、訪問看護・訪問介護・訪問リハビリ・宅配給食など多様なサービスを提供している。また、行政や地域の他のケア機関と連携して、家庭復帰や在宅ケアをフォローするためのシステムづくりに取り組んでいる。

在宅ケアを支援し介護者の健康を守る
2002年、北海道で開催された「第14回全国介護老人保健施設大会」。2004年は香川県で開催される予定
2002年、北海道で開催された「第14回全国介護老人保健施設大会」。2004年は香川県で開催される予定
実務経験2年未満の職員を主な対象にした「職員基礎研修会」の模様。教育研修事業は全老健の重点事業になっている。
実務経験2年未満の職員を主な対象にした「職員基礎研修会」の模様。教育研修事業は全老健の重点事業になっている。
 「老健施設は主に介護予防が目的で、『健康日本21』は保健予防が中心と、この二つは法的には線引きされていますが、本来は一体のものです。『健康日本21』のような運動を進めるには施設や行政だけが頑張ってもうまくいくものではなく、住民の意識改革が重要です。住民とともに地域づくりに取り組み、地域全体で高齢者の生活を支えていくべきだというのが私どもの考え方です」
 また、「健康日本21」との関係で老健施設が果たす役割としては、介護する家族の健康を守ることが挙げられるという。
 「介護者が健康でなければ在宅ケアは成り立ちませんが、介護者も高齢化しており、老老介護が一般的になっています。介護者が疲れたときやリハビリが必要になったときには、ショートステイやデイケアを利用して休養をとってもらうことが大切で、それが共倒れを防ぐことにつながります」
 あずけっぱなしにするのではなく、出たり入ったりしながら施設を上手に利用して、介護を継続していくのが理想的な形だという。
 「長野県の佐久総合病院老健施設(若月副会長が施設長)は入所定員が94床、デイケアが40人ですが、月に300人くらいの利用者があります。それだけ出入りが激しいということで、地域のみなさんにうまく活用していただいていると思います」
 しかし、全国的にみると、近年は利用希望者の重度化や介護保険制度の導入などによって、入所期間が長期化して家庭復帰率が低下する傾向にあり、老健施設が特養と同様の形で利用されているとの指摘もある。
 「それは、その地域の人々が高齢者を地域でみていこうという意識があるかどうか、介護サービスの基盤整備ができているかどうかによります。在宅ケアを支援する体制が整っていなければ、どうしても家庭復帰は難しくなります。介護保険制度はようやくすべり出した段階で、まだ基盤整備が進んでいない所もありますから、地域のニーズに応じて弾力的に運用することも必要ではないかと考えています」
 いま、介護保険制度の見直しや2015年に向けての高齢者介護の在り方について、さまざまな提言が出されており、小規模・多機能・地域分散型のサービスが注目されている。小規模でも身近な所に施設があれば使い勝手がよく、もっと気軽に利用できる。
 「老健施設にも〈分館型〉という小規模施設の制度が平成7年から設けられています。ただ、東京23区内と離島・へき地に限るという制約があるため、残念ながらあまり普及していません。また一時期、郵便局の統廃合が話題になりましたけれども、郵便局は街中の立地条件のよい場所にありますから、郵便局に老健施設を設置してはどうかと提言したこともあります」

痴ほう性高齢者対策などケアの質の向上を図る
2002年、北海道で開催された「第14回全国介護老人保健施設大会」。2004年は香川県で開催される予定
機関誌「老健」を月1回発行し、全老健の活動内容、高齢者ケアの新たな取り組み、行政の動向などについて情報提供を行っている
 全老健では、高齢者ケアや、介護保険と老健施設の在り方などに関する調査・研究に積極的に取り組んでいる。
 「私どもでは創立以来、理論に基づく科学的なケアを目指して努力を重ねてきましたが、まだノウハウが確立されたわけではありません。現在は、全体のケアレベルを上げる中で個別ケア、利用者主体のサービスをどう構築していくかが課題になっています」
 ことに、痴ほう性高齢者対策が急務になっているとのこと。入所利用者の中に痴ほう性高齢者が占める割合は、平成元年には59%にすぎなかったが、年々増加し、13年には90%に達した。全老健が行った実態調査によると、施設の多くが痴ほう性高齢者の徘徊【はいかい】・暴力行為・無断施設外離出などの問題行為や、転倒・骨折予防のケアに苦慮しているという。
 「痴ほう性高齢者に対するケアの質を上げるためには、痴ほうに関する医学的知識を持ち、高齢者の言動や心理をよく把握して対処することが求められます」
 痴ほう性高齢者のケアはこれまで、どちらかというと介護者の側の視点から行われていたが、高齢者の側に立ったケアが必要ではないかという方向に変わりつつあり、生活を重視したグループホームやユニットケアが注目されている。ユニットケアは、10〜15人の小単位に分けてきめ細かいケアを行うもので、痴ほう性高齢者には有効とされている。
 「老健施設では、高齢者の尊厳を守るために〈身体拘束ゼロ作戦〉を展開していますし、ユニットケアのスペースを設けて積極的に取り組んでいる施設もあります。しかし、2005年度より、老健施設に関してはユニットケアのための改造費などは出せないということなので、とまどっている状態です」
 ユニットケアを行うには、職員の増員や施設の改造などの費用がかかる。補助金が出ないということになると、ユニットケアに取り組むのは難しくなるという。

優れた人材を育成するために各種の研修会を開催
 教育・研修事業は、全老健が最も力を入れている事業の一つで、全国各地で各種の研修会やセミナーを開催している。
 「質の高いサービスを提供するためには、優れた人材の育成が欠かせません。最近は、人とふれあう仕事をしたいという若い人が増えており、介護福祉士などの資格ができたこともあって介護分野に多くの若い人が入ってきています。大変よろこばしいことです」
 研修会には、主に新入職員などを対象にした〈職員基礎研修会〉、実務経験5年程度の職員向けの〈中堅職員研修会〉、管理者(職)を対象にした〈管理者(職)研修会〉のほか、リハビリ職員や医師を対象とした研修会、ケアに携わる職種を対象としたテーマ別の研修会などがある。
 また、全国の老健施設関係者が参加し、高齢社会を支えるための老健施設の在り方に関して研究し、相互研鑽【けんさん】を図る〈全国介護老人保健施設大会〉を毎年一回開催している。
 広報・出版事業としては、機関誌「老健」を月一回発行して会員施設に配付するほか、研究事業の成果を事業マニュアルとして出版している。インターネットを使った情報提供も行っており、昨年、メールマガジン「e-roken」を創刊した。

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