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月刊誌「健康づくり」2004年月4号より

がん研究振興財団の取り組みについて
 がん研究振興財団は、がんの制圧を目指して設立され、がんの病態解明、診断・治療技術の開発、社会復帰・緩和ケアなどのがん研究に対する助成、人材の育成、国際協力、正しい知識の普及・啓発などの事業を行っている。

国のがん戦略を民間の立場から支援
 がん研究振興財団は、昭和43年に「がん研究振興会」として発足し、寄せられた浄財によって、がん研究の助成などを行ってきた。その後、昭和58年に官民一体となって取り組む「対がん10か年総合戦略」(今号(2004年4月号)参照)が打ち出されたのに伴って、民間部門が担う支援事業を幅広く実施していくことになり、寄付行為の一部改正を行って、名称を「がん研究振興財団」と変更した。がん研究振興財団の活動と「健康日本21」への取り組みについて、土居眞専務理事に話を聞いた。
 「がんは、昭和56年に死亡原因の第1位となって以来、増加の一途をたどっています。現在では死亡原因の3割を占め、年間の死亡者数は30万人を超えています。がん撲滅は国民の強い願いであり、当財団では創立以来、がんの制圧を目指して活動を展開してきました。学問研究分野での支援がメーンになっていますが、一般の方々に向けた知識や情報の提供も積極的に行っています」
 事業資金は、国や公益団体からの補助金、法人や個人の寄付などで、この中には、がんで亡くなった人の遺族からの芳志も多く含まれているという。

<第三次対がん10か年総合戦略>が平成16年度からスタート
 「〈対がん10か年総合戦略〉、それに引き続く〈がん克服新10か年戦略〉によって、がんの本態解明が進み、診断・治療技術も目覚ましい進歩を遂げました。しかし、発がんの要因やがんの生物学的特性などについて、その全ぼうが解明されるには至っていません」
 この間、胃がん、子宮がんなどによる死亡者数は減少したものの、大腸がん、肺がん、乳がんなどは増加しており、このままいくと、 年間のがん死亡者数は15年後には45万人に達するとの試算もある。より有効な対策が必要ということで、〈第三次対がん10か年総合戦略〉が今年度(平成16年度)からスタートする。
 「一次、二次はどちらかというと研究重視でしたが、今回の第三次は予防や治療にも重点を置いた内容になっています。研究、予防、医療を総合的に推進することによって、がんの罹患率と死亡率の激減を目指しています。これまでの枠からはみ出る部分もあるので、私どもとしてもどう対応するか検討している最中です」
 従来の戦略と異なる主な部分は〈がん予防の推進〉と〈医療の均てん化〉だという。
 「がん予防の推進は、『健康日本21』と連携したものです。がんは遺伝子が傷ついて発生する病気であることが分かってきましたし、遺伝子を傷つける要因としては、たばこ、食物、ウイルスなどによる感染症が重要と考えられています。がんを防ぐにはまず生活習慣の改善が必要です。そして、早期発見・治療のためにがん検診の充実を図ることが求められます」
 医療の均てん化は、全国どこでも質の高いがん医療を受けられるようにすることで、国立がんセンター、地方中核がんセンター、大学病院のほか、各地域にがん拠点病院を整備するとともに、がん専門医の育成を図る。
 「基礎研究の成果を積極的に予防・診断・治療に応用する〈トランスレーショナル・リサーチの推進〉も今回の戦略目標の一つに掲げられています」
 基礎研究の成果を臨床に応用するまでにはかなり時間がかかるが、それを短縮するためのシステムづくりだという。

若手研究者の育成と国際研究交流の推進
若手研究者を採用して、がん研究機関で研究に参画させる<リサーチ・レジデント制度>
世界の著名な研究者を招いて開催される<国際がん研究シンポジウム>

 がん研究振興財団では、国のがん戦略を支援するために、若手研究者の育成、海外の研究者の招聘(しょうへい)、日本人研究者の海外派遣、外国への研究委託などの事業を行っている。
 「将来のがん研究の中核となる人材を育成する〈リサーチ・レジデント制度〉は支援事業の柱の一つです。若手研究者を採用して国立がんセンターなどのがん研究機関で研究に参画してもらうもので、これまでに千人以上の研究者がこの制度を利用しています」
 支援事業のもう一つの柱は国際研究交流の推進である。
 「諸外国の優秀な研究者を招聘したり、わが国の研究者を外国に派遣して、共同で研究に取り組んでもらうものです。また、国内では実施の困難な研究などを外国の研究機関に委託するといった事業も行っています」
 このほか、日本自転車振興会や日本小型自動車振興会からの補助事業として、〈国際がん研究シンポジウム〉や〈国際がん研究講演会〉を開催している。


がん研究に対する助成は36回に及ぶ

 がん研究振興財団では独自の事業として、優れたがん研究に対して助成を行っている。毎年公募で、一般課題20件(1課題につき120万円)、特定課題3件(1課題につき300円)を選んで助成金を出している。毎年50〜60件の応募があるという。
 「主に臨床に関連する研究に対して助成しています。これは創立以来実施している事業で、平成15年度で36回目になります。研究者はさまざまなところから助成を受けていますが、もうひと押しという段階で資金が足りなくなるケースが多いので、私どもではその部分をプッシュしていきたいと考えています」
 平成12年度からは新たに、看護などのコ・メディカル(医療従事者)の人材育成事業に取り組んでいる。
 「がんと向き合う患者さんや家族にとって看護は身近な問題です。看護の向上を図るために、内外のがん看護関係者の参加を得て〈国際がん看護セミナー〉を年1回開催しているほか、看護師、薬剤師、技師などの海外研修を助成しています」
 また、末期医療において重要な疼痛(とうつう)緩和療法(緩和ケア)の普及を推進するために、医師、看護師等を対象にした〈末期医療患者のQOL 推進講習会〉を開催している。これは厚生労働省からの委託事業で、毎年全国8カ所(札幌、仙台、大宮、東京、大阪、呉、松山、福岡)で行っている。
 「患者さんのQOL (生活の質)の向上を図ることは、これからの重要なテーマです。よそではやっていませんから、私どもでは今後も積極的に取り組んでいく方針です」


優れた人材を育成するために各種の研修会を開催
全国各地で<がん予防展>や<がん予防講演会>を開催し、がんに関する知識や最新の情報をわかりやすく提供している
 「国民一人ひとりが日常生活の中で、がんを予防あるいは早期発見・治療できるように、がんに関する正しい知識や最新の研究の情報を提供するとともに、国のがん戦略を理解してもらうための普及・啓発活動を展開しています。これは『健康日本21』に連動する事業でもあります」
 がん研究振興財団では〈がん予防講演会〉や〈がん予防展〉を全国各地で開催しており、これまでの参加者総数は約65万人に上る。
 また日本宝くじ協会からの補助事業として、一般の人向けに「がんを防ぐための12カ条」「やさしいがんの知識」「君たちとたばこと肺がんの話」などの小冊子、対がん戦略PRポスター、カレンダー、ビデオなどを作成して無料で配付・貸し出ししているほか、「がんの統計」「がん診療の進歩」などの学術誌の発行も行っている。

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