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月刊誌「健康づくり」2004年6月号より

(財)エイズ予防財団の取り組みについて
エイズ予防財団では、エイズについての知識を提供するために、各種のパンフレットを制作・配付している

 

(財)エイズ予防財団は、国のエイズ対策を支援するために1987年に設立された。エイズに関する知識の普及啓発、予防や治療に関する研究の推進、研修、国際的な情報交換、日本エイズストップ基金の運営などを行っている。


エイズは着実に増加しており感染爆発が起こる危険性が高い
 エイズ(後天性免疫不全症候群)は、1981年に米国で最初の患者が報告されて以来、アフリカを中心に現在も感染が拡大している。UNAIDS (国連合同エイズ計画)とWHO (世界保健機関)によると、2003年末の世界のHIV感染者・エイズ患者は4千万人。2003年に新たに感染した人は500万人、死亡した人は300万人と推計されている。日本の現状やエイズ予防財団の活動について、島尾忠男理事長に話を聞いた。
 「日本は世界的にみると、HIV感染者・エイズ患者数は最も低いレベルにありますが、着実に増加しており、いつ感染爆発が起きてもおかしくない状況です。今の若い人たちは性的に活発で、不特定多数と性経験を持つ人もかなりみられます。クラミジア感染症などの性感染症が急増していることを考えると、すでに水面下で感染爆発が起こり始めているのではないかと危惧(きぐ)しています」
 日本のHIV感染者は2003年末で約5,800人、エイズ患者は約2,900人。2003年1年間に報告された感染者は627人と過去最高で、患者は326人で前年より増加している(速報値)。エイズの感染経路は、性的接触、血液、母子感染の3つだが、感染経路でみると性的接触によるものが増加し、全体の9割近くにのぼるという。
 「1985年に日本で最初のエイズ患者が出たときにはエイズパニックが起きましたし、薬害エイズ問題がクローズアップされたときにも関心が高まりました。昨今、エイズは忘れ去られた感がありますが、楽観できる情勢ではありませんから、もっと身近な問題として考えていただきたいと思います」

国のエイズ対策を民間の立場から支援
 政府は1987年に、エイズについての正しい知識の普及啓発、検査・診療体制の充実等を盛り込んだ「エイズ問題総合対策大綱」をまとめた。その事業の一部を実施するため、厚生省(当時)の許可を受けて、(財)エイズ予防財団が設立された。
 「当財団の事業は、国からの委託事業や補助事業がメーンになっています。エイズに関する知識の普及啓発、相談、HIV感染者やエイズ患者に対する支援、エイズ対策に従事する職員や医療関係者の養成・研修、国際協力、調査研究などのほか、日本エイズストップ基金の運営を行っています」
 (財)エイズ予防財団の事業の中で、中心になっているのは普及啓発事業だという。
  「正しい知識の普及はエイズ対策の基本ですから、年間を通じてキャンペーンを展開しています。ポスター・パンフレット・ビデオ等の制作、空港でのビデオによる海外渡航者への啓発、映画館でのスポットCM 、ホームページでの情報提供などを行っています。また、12月1日の〈世界エイズデー〉に合わせて、さまざまなイベントを実施しています」
 エイズ電話相談等の相談事業も重要なもので、1日に約60件の電話相談があるとのこと。HIV感染者やエイズ患者には外国籍の人も多いため、8カ国語に対応した〈JFAP エイズサポートライン〉も設けている。
 日本エイズストップ基金は1993年に設置され、集まった基金は、エイズ患者・HIV感染者への支援活動を行っている民間ボランティア団体に配分されるという。
2003年、東京・新宿で行われた〈世界エイズデー〉のイベント。タレントの飯島愛さんがゲストとして参加し、若い人たちにエイズの予防を呼びかけた

エイズも生活習慣病!? 注意すれば予防できる
 「『健康日本21』は、予防できる病気は予防に努めて健康寿命を延ばしましょうという趣旨で、生活習慣病に重点が置かれています。エイズは感染症ではありますが、生活習慣病というとらえ方もできるのです。空気感染や飛沫(ひまつ)感染するわけではなく感染経路が限られていますから、注意すれば確実に予防できる病気です。私どもでは特に『健康日本21』に向けた事業は行っておりませんが、エイズの予防を推進することが『健康日本21』につながると考えています」
 性生活は子孫を残すうえでも人間にとって重要なものであり、食生活などと同様に正しい知識を得て、危険な性感染症から身を守る努力が必要だという。
 「若年層にHIV感染が流行する兆しがみられますから、青少年へのエイズ教育が重要です。しかし、性がからむだけにいろいろ難しい問題があります。子どもたちと親や教師との性に対する考え方のギャップが大きいことが一番の問題です。今は性に関する情報が氾濫はんらんしていますし、高校生くらいになるとセックスを肯定的にとらえていますから、率直に話すほうがいいと思うのですが、高校生がセックスなんてとんでもないという親や教師が多いのです」
 また、文部科学省と厚生労働省との連携がスムーズでなかったケースもあり、これについては今年度(2004年度)から、厚生労働省が文部科学省と連携して青少年エイズ対策事業を進めることになっている。

国際協力活動を強化しアジアのエイズ対策を支援
 「2000年に開催された沖縄サミットで、日本が提唱して〈世界エイズ・結核・マラリア対策基金〉が設けられ、世界規模で対策が進められています。私どもでも従来から行っている国際研修に加え、来年(2005年)神戸で開催される〈第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議〉の支援など、国際協力活動を強化していく方針です」
 国際的なエイズ戦略の中心になっているのはUNAIDS だが、治療に関してはWHO も独自の取り組みを行っており、2003年〈3 by 5 〉(スリー・バイ・ファイブ)というプロジェクトを打ち出した。
 「これは、2005年末までに300万人にエイズ治療薬を提供するという大プロジェクトです。私どももアジアでのエイズ対策に協力したいと考えています」
 アジア・太平洋地域では中国、インド、インドネシアなどで感染が拡大しており、感染爆発が懸念されている。アジア・太平洋地域でのHIV感染者・エイズ患者数は740万人。2003年には100万人が新たに感染し、死亡者は50万人に及ぶという。
 「途上国は先進国と医療事情が異なりますから、単に薬を提供するだけではなく、カウンセリングや検査方法の確立、薬を配付するためのシステムづくりなどが必要です。それには、長年にわたる結核対策で培ったノウハウが有効であり、結核対策プロジェクトの中でエイズ対策を一緒に行うというのが実際的な方法ではないかと考えています。すでにタイ北部のチェンライで、結核予防会が試験的な取り組みを行っています」
 エイズにかかると免疫機能が低下し、さまざまな日和見感染症を発症する。日本では結核とエイズの流行時期がずれていたのでそれほど多くないが、世界ではHIV感染者・エイズ患者の約3分の1が結核を発症。そのため、エイズと結核対策を併せて行うのは大変効果的な方法なのだという。島尾理事長は結核の専門家で、以前は結核予防会の理事長をつとめていた。
 「2005年のアジア・太平洋地域エイズ国際会議には、世界各国から学者や研究者だけでなく、患者や感染者を含む多くの人々が参加します。患者や感染者に対する偏見や差別をなくすとともに、エイズへの関心を呼び戻すまたとない機会だと思っています」
 1994年に横浜で〈第10回国際エイズ会議〉が開催されたが、アジア・太平洋地域の会議としては初の日本開催であり、積極的に支援して成功させたいという。

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