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月刊誌「健康づくり」2004年9月号より

日本家族協会の取り組みについて
(社)日本家族計画協会は、生涯を通じた性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)の実現に向けて、調査研究、クリニック・カウンセリング、研修・セミナー、教材の開発・提供等の事業を行っている。

母体保護の視点から運動がスタート
  日本家族計画協会は、1954年(法人格を取得したのは1956年)に活動を開始し、2003年、50周年を迎えた。原澤勇専務理事に日本家族計画協会の活動内容や、『健康日本21』および『健やか親子21』への取り組みについて、お話を伺った。
 「家族計画というと、少子化問題と結びつけて、生まないことを奨励しているように思われがちですが、私どもの運動は人口問題ではなく、女性の健康を守る母体保護の視点から始まりました。本会の設立当時は戦後のベビーブームの後で、もう子どもは欲しくないにもかかわらず受胎調節の知識が普及していなかったため、望まない妊娠をして人工妊娠中絶をする女性が大変多かったのです」
 1956年はそのピークで、年間の人工妊娠中絶は117万件にのぼり、中絶によって命を落としたり、健康を損なう女性が少なくなかったという。現在の人工妊娠中絶件数は30万件前後なので、約4倍に当たり、いかに多かったかが分かる。
 「望まない妊娠を避け、確実に避妊を実行して母体を守るという家族計画の理念を知ってもらうことが私どもの運動の出発点で、機関紙『家族計画』(現在の『家族と健康』)を発行することから活動がスタートしました」
 厚生省(当時)も対策に乗り出し、保健所、市町村役場、病院、事業所などで〈受胎調節実地指導員〉の資格を持つ助産婦(師)などによる相談・指導が開始された。
 「正しい避妊法の普及は地域保健の大きな課題になっており、私どもはまず家族計画の理念の確立を行い、行政と連携してこの問題に取り組みました。私どもの主な活動は、受胎調節実地指導員の養成・研修、教材の開発・提供、巡回相談(人集めや指導方法のモデルをつくる)の3つの重点事業でした」
 それ以来、日本家族計画協会は地域保健と深くかかわりながら運動を展開してきた。

リプロダクティブ・ヘルスの実現を目指す

 「母体保護から始まった本会の運動の目標は、リプロダクティブ・ヘルスの実現です。リプロダクティブ・ヘルスというのは、家族計画、母子保健、思春期保健を含む、生涯を通じた性と生殖に関する健康です。避妊や人工妊娠中絶防止といった当面の課題への取り組みから、性教育を性にかかわる健康問題として幅広くとらえて活動を行っています」
 日本家族計画協会の活動の基本テーマには、受胎調節、思春期保健、健康教育、性教育・相談、遺伝相談、母子保健、不妊相談、中高年女性保健、男性保健、STD(性感染症)予防、性暴力・児童虐待・子どもの事故防止、思春期・避妊クリニックネットワーク構築、国際協力などが挙げられている。
 子どもから老年に至るまでの性にかかわるさまざまな問題を扱っているわけで、 『健康日本21』や『健やか親子21』と重なる部分も多く、日本家族計画協会では両者の推進協議会のメンバーとして活動を展開している。
 「特に『健やか親子21』の思春期編については、本会クリニック所長の北村邦夫ドクターが検討委員会に参加し、具体的な方策についてプランを出しました。思春期対策は私どもがずっと取り組んできたテーマで、その中で培ったノウハウを国レベルの大きな運動に取り入れていただいたということで、大変うれしく思っています」

「思春期保健セミナー」の模様。講義だけでなく、コンドームの装着法などを実際に学ぶ実習も行われる。

思春期対策に積極的に取り組む
東京・渋谷で行われた「世界エイズデー」のイベントに参加し、エイズの予防を呼びかける〈JFPA 若者委員会〉のメンバー。
 「50年たった現在も、望まない妊娠を避け、母体を守るという基本的コンセプトは変わっていませんが、対象となる年代が若くなっています。発足当初は30〜40代が対象でした。それが新婚家庭、婚約カップル、さらに思春期へと移行しています」
 近年は、10代の性行動が活発になっており、人工妊娠中絶や性感染症の増加が憂慮されている。こうしたことを防ぐには、正しい性の知識を提供することが必要ということで、日本家族計画協会では思春期対策に積極的に取り組んでいる。『健やか親子21』でも、思春期の保健対策の強化と健康教育の推進が主要課題に掲げられている。
 「私どもでは、思春期の子どもたちの抱えるさまざまな問題に対処するために、日本思春期学会の指導を得て、1981年から〈思春期保健相談士〉の養成を行っています。これまでに約6,000人がこの資格を取得しています」
 思春期保健相談士の資格を持つ人は、保健師、助産師、看護師、教師、養護教諭、医師などのほか、警察官、産業カウンセラー、少年補導員、臨床心理士など多方面にわたっており、県協議会をつくり、研鑽(けんさん)と問題の解決に当たっているという。
 また、1982年から思春期の子どもたちを対象にした電話相談〈思春期ホットライン〉をスタートさせ、さらに2年後には〈思春期クリニック〉を開設した。
 「性に関する悩みがあっても産婦人科には行きにくいという若い人が多いので、思春期問題専門のクリニックを設けて、若い人たちの相談にのっています。その全国ネットワーク化を図っており、現在の17から近く30に増やす予定です」
 相談内容としては、月経関連や緊急避妊が上位を占めているとのこと。緊急避妊というのは、避妊をしなかったり避妊に失敗したりして妊娠の恐れがある場合に、中用量ピルなどを使って妊娠を防ぐ方法だという。
 「また『健やか親子21』運動の中で、思春期対策の一環として〈ピアカウンセリング〉を全国展開しています。ピアは仲間という意味で、同世代の立場から性の知識を提供し、サポートしていくものです。従来の保健指導や健康教育は上意下達(じょういかたつ)型で、若い人には素直に受け入れてもらえません。いまは、寄り添ってともに考えるという時代になっています」
 仲間の団体である「母子保健推進会議」では、〈子育てピア〉として、育児に悩む若い母親の支援にピアカウンセリングを取り入れているとのこと。
 「ピアカウンセリングの普及を図るために、〈若者委員会〉の組織化に取り組んでいます。本会の若者向けの講座の受講者の中から、意欲のある人に参加してもらう形で進めていますが、将来的には、市町村、都道府県、国の各レベルで組織したいと考えています」
 JFPA 若者委員会は、学園祭や街頭などでキャンペーン活動を展開しており、エイズ対策にも協力している(JFPA は日本家族計画協会の英語の略称)。

研修・セミナーの開催や教材の開発提供

 日本家族計画協会では、保健師、助産師、看護師、医師、教師など、保健・医療・教育・福祉などの指導者や専門家を対象とした研修・セミナーを開催している。
 「これは人材を育成するための重要な事業で、年に36〜7回開催しています」
 思春期保健相談士を養成する思春期保健セミナー、ピアカウンセラー養成セミナーのほか、中高年女性健康づくり指導者セミナー、乳幼児の事故予防セミナー、受胎調節実地指導員認定講習会、遺伝相談カウンセラー研修会などが行われている。
 「教材の開発・提供は、創立以来、力を入れてきた事業で、よそにはないものをいろいろ開発しています。母子健康手帳は、いまではあちこちでつくっていますが、これができた当初は全国の7割を私どもが扱っていました。教材の開発・提供事業は、本会の主な収入源になっています」
 日本家族計画協会では広報事業として、機関紙「家族と健康」、ニュースレター「FAX 通信」を発行しており、JFPA ホームページ(http://www.jfpa.or.jp )でも情報提供を行っている。『家族と健康』では毎号、『健康日本21』や『健やか親子21』の現状を取材して掲載している。

日本家族計画協会では、「母子健康手帳」をはじめ、各種の保健指導用教材の開発・提供を行っている。

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