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月刊誌「健康づくり」2004年月10号より

予防医学事業中央会の取り組みについて

 (財)予防医学事業中央会は、病気の予防について各種の活動を行い、国民の保健と福祉に寄与することを目的に設立され、健診検査・健康教育・調査研究の三つを柱に予防医学事業を展開している。

寄生虫予防から予防医学事業へと発展
 予防医学事業中央会の前身は「日本寄生虫予防会」で、その後、事業を拡大し、昭和41年に「予防医学事業中央会」に改称した。その経緯や現在の予防医学事業中央会の事業、『健康日本21』への取り組みなどについて、山内邦昭常務理事にお話を伺った。
 「私どもは最初、寄生虫検査を行う機関として発足しました。戦後は国土が荒廃して寄生虫がまん延し、関東地区では腹痛の原因の8割が寄生虫でした。そこで、昭和24年に東京寄生虫予防協会をつくったのです」
 その後、全国各地に同様の組織ができ、その中央組織として日本寄生虫予防会が設立された。日本寄生虫予防会の活動が功を奏し、また衛生状態の向上もあって、20年ほどで寄生虫は激減したという。
 「寄生虫予防に努めたところ、寄生虫が減って仕事がなくなるという皮肉な結果になったわけですが、せっかく培った技術を他のことに生かしたいということで、寄生虫予防も含めた疾病予防に事業を拡大し、予防医学事業中央会と改称したのです」
 現在は、全国36都府県に37の支部があり、健診検査、健康教育、調査研究、研修、国際協力などの事業を行っている。
 「予防医学は、疾病予防から健康増進へと重点が移ってきており、私どもも以前から健康増進事業に積極的に取り組んでいます。『健康日本21』と連携して、健康づくり支援サービス機関を目指したいと考えています」

精度管理を徹底しデータの共有化を推進
 予防医学事業中央会グループでは、毎年1億3,000万件を超える各種の健診検査を行っているという。健診が中心だが、環境検査(作業環境測定や水質検査など)、細菌検査(O‐157などの細菌類)、食品検査(食品に含まれる化学物質)なども行っている。
 「健診において重要なのは、精度管理です。素人の方は、どこで健診を受けても同じ数値が出ると思っておられるようですが、検査機器や検査方法によって出てくる数値は異なります。健診データは健康管理の基礎となりますから、全国どこで健診を受けても限りなく同一の数値が出ることが理想です」
 精度管理がきちんと行われていないと、転勤などで検査機関が変わった場合、前のデータと比較できなくなってしまうため、全国規模の企業では、全国ネットワークでの健診を望むところが多いという。そのため、予防医学事業中央会では各支部を中心に全国ネットワーク健診体制を整備し、それらの要望に応えている。
 「私どもでは毎年、技術専門委員会の指導のもとに、精度管理調査を実施しています。また、インターネットを利用して毎日の検査データによる精度管理を行い、全国支部のデータ共有化を実現しました。ですから、どの支部で健診を受けても大丈夫です」
 現在の健診制度については、労働安全衛生法や老人保健法といった制度間で検査項目や検査方法が異なっているなど、さまざまな問題点が指摘されている。
 「6月に健康増進法に基づいて〈健診の指針〉が告示されました。どこで健診を受けても健診データが継続して見られるようにし、保健指導の内容や結果を含めて健康手帳に記載するといった方向性は出されましたが、具体的な方法は示されませんでした。制度間で異なる保健事業の基本的な共通事項を定め、生涯にわたる健康増進に役立つ健診体制を確立することが今後の課題といえます」

「健康危険度予測」システムで生活習慣の改善を促す
「健康危険度予測」システムによる生活指導の様子
保健師とともに、「健康危険度予測」システムを使って受診者に健康危険度を説明し、生活指導を行う山内常務
技術者向け研修会の様子
技術者を集めて行われる研究会の模様。予防医学事業中央会では、支部職員の資質の向上を図るため各種の研修会を開催している

 「前にお話したように、健診データは経年的に見ていくことが大事です。今年、異常がなかったからといって安心するのは間違いです。例えば、コレステロール値が今は正常範囲であっても年々上昇している場合には、やがて異常値になることが予測されます。そうなる前に生活習慣を改善し、ずっと正常値を保てるようにすることが重要なのです」
 生活習慣病を防ぐためには、そうした早めの対策が必要だという。しかし、コレステロール値が年々上昇していることがわかっても、具体的な症状がなければ生活習慣を改めるのはなかなか難しい。
 「私どもでは、生活習慣の改善を促すためのツールとして聖マリアンナ医科大学予防医学教室の吉田勝美教授が開発された「健康危険度予測(HRA)」システムを導入しています。これは『健康日本21』に対応して始めたもので、よそにはないシステムです」
 「健康危険度予測」は、個人の健康情報や生活習慣情報を入力すると、将来の自分の健康危険度が予測できるシステム。各支部から情報を中央会のサーバーに送ると、すぐ結果がみられる仕組みになっている。
 「将来の自分の健康危険度が明示されると、自覚症状がない人でも、このままではまずいという気になるものです。そこで、保健師が生活指導を行い、実行できる項目を本人に選んでもらい、それを入力すると危険度がどこまで下がるか表示されます」

地方計画策定を支援する「地域・職域診断サービス」

 もう一つ、予防医学事業中央会が独自の取り組みとして行っているものに、「地域・職域診断サービス」がある。
 「これも、吉田先生と私ども中央会グループの協力研究でつくりあげたシステムです。300万人分の健診データと問診データを集めて解析し、検査結果からみた健康異常と問診結果からみた健康リスクについて、全国、都道府県、対象集団の有所見率を算出し、市町村や企業など対象集団の健康課題が何であるかを示すとともに、それに対してどのような対策が必要かをアドバイスするものです」
 全国3,000の市町村の中で、『健康日本21』の地方計画の策定ができているところは3分の1程度といわれている。地方計画策定がなかなか進まない背景には市町村合併の問題があるが、一番の原因は、各市町村が自分の地域の健康課題が何であるかを把握できていないことだという。
 「自分の地域の喫煙率が何%、コレステロール値が高い人が何%といったデータは得られても、それを全国値や都道府県値と比較する手段がないため、よそと比べて多いのか少ないのかわからないのです。問題点がわからなければ計画の立てようがないわけで、それは企業にしても同様です。そうした市町村や企業に、このサービスを活用していただきたいと考えています」

より高度な健診を目指して調査研究に取り組む
機関誌及び疾病予防や健康づくりに関する各種パンフレット
予防医学事業中央会では、機関誌「予防医学ジャーナル」のほか、疾病予防や健康づくりに関する各種パンフレットを作成している
 予防医学事業中央会では、時代に即したより高度なレベルの健診を提供するとともに、予防医学運動の新たな方向性を探るために、各種の調査研究活動を行っている。
 「今後の方向としては、生活習慣病のみでなく、骨・関節疾患などの生活機能病の健診方法や、その適切な日常生活指導方法に関する研究が重要になると考えています。また、私どもでは昭和62年からいち早く、小児生活習慣病予防対策に取り組んできました。近年、子どもの生活習慣病の増加が大きな問題になっていますから、従来にも増してこの研究に力を注ぎ、小児生活習慣病予防健診システムの確立を目指しています」
 このほか、厚生労働省や(財)日本学校保健会などの調査研究への協力、各学会や研究会開催のサポートなども行っている。
 「国際協力も積極的に行っています。アジア諸国やメキシコなどでも、寄生虫対策から予防医学へと変わりつつあるので、これまでの経験を生かして支援しています」
 予防医学事業中央会では、予防医学の大切さを広く知ってもらうために、機関紙「予防医学ジャーナル」を発行しているほか、疾病予防や健康づくりに関する各種のパンフレットを作成、配布している。

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