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月刊誌「健康づくり」2004年月12号より

(財)日本心臓財団の取り組みについて
 (財)日本心臓財団は、心臓病や脳卒中などの心臓血管病の予防・制圧を目指して1970年に設立され、若手研究者に対する研究助成、正しい知識の普及啓発、国際交流・国際協力などの事業を行っている。

心臓血管病に関する研究開発に対して助成
 日本心臓財団は、国際心臓学会会長だった故P・D・ホワイト博士の提言がきっかけになって設立されたという。設立の経緯や日本心臓財団の活動について、杉本恒明副会長、村松孝夫事務局長にお話を伺った。
 「1964年に開催された第3回アジア太平洋心臓学会に参加するために来日したホワイト博士が、日本においても心臓血管病の増加がみられることを危惧し、他の先進国同様、心臓血管病の研究、予防啓発活動を行う心臓財団の設立を呼びかけられたのです」
 それを受けて、経済界の有志と医学界の代表が協力して設立に奔走したものの、そのころの日本はまだ“粗食の時代”で心臓病はそれほど多くなく、また巨額の資金が必要なこともあって思うように進まず、設立までに6年の年月を要した。その後、日本でも心臓血管病が増加し、現在では日本人の死因の2位と3位を心臓病と脳卒中が占めている。高齢化の進展に伴ってさらに増加すると予測され、その対策が大きな課題になっている。
 「当財団では、心臓血管病に関する研究への助成、予防知識の普及啓発、国際活動の3つを柱に事業を展開しています」
 メーン事業は研究助成で、日本心臓財団が独自に行っているものと、企業などの協力を得て行っているものとがあり、両方合わせると年間約50件にのぼる。また、海外の研究機関に留学・研修等を希望する研究者に対しても助成を行っている。
 「国際活動としては、日本循環器学会とともに世界心臓連合に加盟し、世界各地で循環器疾患の予防プロジェクトを実施しています。また、国際学会等の開催も積極的に支援しています」

心臓病予防制圧への提言が『健康日本21』へと発展
 『健康日本21』については、日本心臓財団は深いかかわりがあるという。
 「日本では、心臓病の治療は急速に進歩したものの、健康保持増進、予防、リハビリテーションの分野では立ち遅れていたことから、財団設立20周年にあたって〈心臓病予防制圧対策研究委員会〉を設置し、2年半にわたってこの分野の研究に取り組みました。そして1991年にその研究成果を『21世紀の心臓病予防戦略/心臓病予防制圧への提言』としてまとめ、政府や関係機関、国民各層に提示しました」
 その骨子は、心臓病を予防するためには危険因子(高血圧症・高脂血症・喫煙・糖尿病・肥満など)をコントロールすることが重要であり、国民一人ひとりが自分の危険因子の指標を認識して生活習慣の改善を図るとともに、それを支援する社会システムの整備が必要であるというもの。
 「この提言が基になって『健康日本21』が策定されたという経緯がありまして、当財団の研究成果が国の施策に取り入れられたわけで、大変誇りに思っております」

インターネットでセカンドオピニオンを提供
「健康ハートの日」のイベントの様子
 
「健康ハートの日」のイベントの様子
「健康ハートの日」のイベントの模様。血圧測定や健康相談に加えて、今年はAEDのPRを行った。

 日本心臓財団では、心臓血管病に関する正しい知識の普及・啓発にも力を入れており、パンフレットやポスターの作成配付、一般市民向け公開講座の開催、インターネットでの情報提供等を行っている。
 「インターネットを利用した『心臓病チェックサイト』を設けています。〈循環器専門医に聞いてみよう〉〈セカンドオピニオン〉〈心臓財団循環器疾患データベース〉の3つがあり、その中で好評なのが〈セカンドオピニオン〉のコーナーです。主治医以外の医師の意見を聞き、納得して治療を受けたいという患者さんのために、ホームページ上で無料で質問を受け付け、循環器専門の先生方にボランティアで回答をお願いしています」
 現在、1カ月に新規の相談が60〜70件、リピーターを含めると100件近い相談があるという。相談内容は、主治医の説明が理解できないといった初歩的なものから、最新の治療法に関するものまで幅広く、中には裁判がらみと思われるものもあるとのこと。
 「患者さんを直接診察せず、検査データなどの資料もない状態で想像で回答するわけですから、本来のセカンドオピニオンというより医療相談に近い形ですが、日本人にはこのほうがなじみやすいように思います」
 医療は患者が選ぶ時代になり、セカンドオピニオンの部門を設ける医療機関が増えてきたが、利用者は少ないといわれている。
 「セカンドオピニオンについては現在、他の医師の意見を聞いたうえで、また主治医の元に戻るという方向で進められています。しかし、主治医を信頼していないから他の医師の意見を求めるわけで、セカンドオピニオンのほうが納得できれば、その医師に診てもらいたいと思うのは自然のなりゆきですし、主治医への気兼ねもあって利用しにくいのではないでしょうか」
 セカンドオピニオンは、医療の質を高めるうえでは効果的なシステムだが、いろいろ難しい問題を含んでおり、掛け声だけではなかなか進まないという。
 「私どもの方法には難点もありますが、一番むりのない形といいますか、こうした試みがもっと一般化していくとよいのではないかと考えています」

AED(自動対外式除細動器)の普及に取り組む

 日本では、突然死する人が年間8万人おり、その約半分が心臓病によるものといわれている。こうした心臓突然死の7〜8割は「心室細動」と呼ばれる不整脈が原因である。
 「止まってしまった心臓を元に戻すには電気ショックを加える(除細動)のが最も効果的な方法で、AED(自動体外式除細動器)は、この除細動を行うための機器です。止まった心臓を元に戻す方法としては心肺蘇生法(心臓マッサージや人工呼吸)が知られていますが、これだけでは救命はできません」
 これまで日本では除細動が行えるのは医師と救急救命士だけだったが、7月から一般の人にもAEDの使用が許可された。
 「除細動はいかに早く行うかがポイントで、1分遅れるごとに10%ずつ救命率が低下します。有効なのは発作が起きてから5分以内。現在、救急車が到着するまでに平均6分半かかり、救急車を待っていては間に合いません。欧米では一般市民によるAEDの使用によって救命率が著しく向上しています」
AEDは小型・軽量で、操作も簡単だという。しかし、人の命にかかわることであり、「もし操作を誤って死なせてしまったらどうしよう」という不安を抱く人も多いのではないだろうか。
 「そういう心配はありません。AEDにはコンピュータが内臓されていて、心室細動か否かを機械が判断し、適応でない場合には作動しません。倒れている人を発見したとき、意識がなく呼吸もしていない場合はAEDの使用を考えてください。音声で指示が出ますから、それに従って倒れている人の胸に電極をはり、ボタンを押すだけでよいのです。心肺蘇生法よりずっと簡単で確実です」
 現在、日本では約4千台のAEDが配備されており、地区医師会などが中心になって普及活動が進められている。「私どもでも、積極的にAEDの普及活動に取り組む方針で、いま、その計画づくりをしているところです」
 AEDを配備する場所としては、学校(教育に取り入れ操作方法を教える)、救急医療機関(医療施設、救急車、消防車、パトカー、白バイ、交番、保健所など)、交通機関(航空機、船、空港、駅など)、人の集まる場所(競技場、会議場、劇場、デパート、ホテル、スーパー、コンビニなど)が挙げられている。また、心停止は家の中でもかなりの確率で起こるため、家庭用AEDも必要であり、心臓病患者への減額販売やリースなどの提供も検討しているという。AEDは、定価60〜80万円だが、まとめて購入すれば30〜40万円で入手できるとのこと。
 「このほか、イベントや会議などへのAEDの貸し出しや講習会の開催を計画しています。広報活動も積極的に展開する予定です」
 日本心臓財団では、8月10日を「健康ハートの日」として心臓血管病の予防キャンペーンを展開しているが、今年はイベント会場にAEDを展示し、PRを行った。

機関誌、各種パンフレット
日本心臓財団では、正しい知識の普及・啓発のために、
機関誌や各種のパンフレット類を作成・配布している



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