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月刊誌「健康づくり」2005年3月号より

骨粗鬆症財団の取り組みについて
(財)骨粗鬆症財団は骨粗鬆症によって生じる寝たきり等の発生を減少させ、国民保健の向上および老人福祉の増進に寄与することを目的に平成3年に設立された。骨粗鬆症に関する知識の普及啓発、調査研究への助成、情報収集等の事業を行っている。

骨粗鬆症は21世紀の国民病

高齢社会の到来に伴って、寝たきりの高齢者の増加やその介護が大きな社会問題になってきている。骨粗鬆症の合併症として起こる骨折は、脳卒中、老衰に次いで高齢者が寝たきりになる原因の第3位に挙げられており、その対策が急務とされている。

同財団の活動や『健康日本21』への取り組みについて、田中讓事務局長と野溝泰昭事務局次長にお話を伺った。

「骨粗鬆症の患者数は約1,000万人と推計されており、人口の高齢化によって今後さらに増えると予測されます。特に女性に多く、65歳以上の女性の2人に1人は骨粗鬆症にかかる恐れがあるといわれています。骨粗鬆症は21世紀の国民病ともいえます。当財団では創設以来、骨粗鬆症の予防啓発に取り組んできました」

骨粗鬆症財団が設立された当時は「骨粗鬆症」という病名を正しく読めない人が多かったそうだが、いまでは、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気であることが広く知られるようになってきた。ここまでくるのに10年以上かかったという。

「骨粗鬆症は高齢者のQOL(生活の質)を低下させる大きな要因の一つです。背骨の圧迫骨折で背中が曲がると、腰痛、神経障害、食欲不振、呼吸機能の低下などを招きますし、さらに骨折を起こすと寝たきりになることが少なくありません。『健康日本21』では健康寿命の延伸が目標に掲げられています。健康寿命を延ばすためには、骨粗鬆症対策が非常に重要だと考えています」

骨粗鬆症は遺伝的要因に加えて、長年の生活習慣(カルシウム摂取不足、運動不足、喫煙、アルコール多飲など)が深くかかわって発症する。

「骨粗鬆症を生活習慣病として認知してもらうために、いま厚生労働省をはじめ関係各方面に積極的に働きかけを行っています。骨粗鬆症はがんや脳卒中などと違って、本格的に取り上げられてからまだ日が浅いといえます。WHOの診断基準が確立されたのは10年ほど前ですから、本格的な対策はこれからという段階です」
 

医療関係者や市民を対象に啓発活動を展開
骨粗鬆症検診は骨量を測定することによって行われ、衣服をつけたまま簡単にできる。

骨粗鬆症財団では教育・啓発活動として、医師、コメディカル、製薬企業の担当者など医療関係者を対象にした〈教育ゼミナール〉、一般市民を対象にした〈市民フォーラム〉を毎年開催している。

 

「教育ゼミナールでは、骨粗鬆症の基礎から臨床における最新の情報を提供しています。市民フォーラムでは骨粗鬆症についての講演会のほかに、骨量測定や無料相談コーナーを設けています」

また、インターネットでも情報提供を行っている。

「ホームページ上で骨粗鬆症に関する各種情報をリアルタイムで発信しています。また、一般の方の質問に専門医が回答するQ&Aも実施しています。ホームページへのアクセス件数は年々増加しています」

骨粗鬆症に対する国民の関心が高まり、病気についての知識が普及してきたのは喜ばしいことだが、同財団が行った調査によると、それが必ずしも予防につながっていない実態が明らかになったという。

骨粗鬆症財団では平成12年に、閉経後の女性と内科医を対象に、骨粗鬆症に関する意識調査を実施した。その結果、閉経後女性の骨粗鬆症についての知識や理解度は高いものの、自分自身のリスクとは認識していない、骨粗鬆症検診を定期的に受ける割合が低い、骨粗鬆症の薬剤治療についての認識が低い、内科医が診療の現場で骨粗鬆症について話をすることは少ない、などの問題点が浮き彫りになった。

「骨粗鬆症はすぐ命にかかわる病気ではないので、危機感が乏しいようです。近年、骨粗鬆症の治療法は大変進歩しており、いい薬がいろいろ開発されていますから、早期に発見して治療を受ければ、骨量の減少を食い止め、骨折を防ぐことが可能です」

1,000万人以上の患者がいるにもかかわらず、実際に治療を受けている人は200万人程度だという。

「骨粗鬆症予防の第一歩は自分の骨量を知ることですから、検診を受ける機会を増やすことが必要だと思います」

厚生労働省は現在、骨粗鬆症検診は40歳と50歳の節目検診として行うよう指導しているが、今年からこれを5歳ごとにして70歳くらいまで実施することがほぼ決定しているという。
 

若年層への対策が今後の課題
骨粗鬆症財団では正しい知識の普及・啓発のために、各種のパンフレット類を作成・配布している。
 

「骨粗鬆症というと中高年者の問題と思われがちですが、骨粗鬆症を防ぐためには若いうちから生活習慣に注意することが大切です。しかし、若年層は骨粗鬆症に対する関心が低く、ことに最近の若い女性はやせ願望が強く、ダイエットに励む人が多いので、将来の骨粗鬆症予備軍として懸念されます」

 

骨量が急激に増加するのは思春期までの成長期の間で、20代までに最大値となる。それが40歳くらいまで維持され、その後は加齢に伴って減少していく。骨粗鬆症を防ぐためには、成長期にできるだけ骨量を増やしておくことが重要になる。

「骨粗鬆症の予防には中高生からの対策が必要ということで、それに向けた取り組みも始めています。若年層向けのパンフレットなどを作成して配付したり、講演会を開催したりしています。また、この問題に関心のある先生方と組んで中高生の骨の測定など、いろいろ調査を行っています」
 

「骨を守る会」を支援し 友の会設立を目指す

「将来的には、患者さんが集う友の会をつくって、ともに啓発活動を展開したいと考えています。がん、腎臓病、心臓病などでは友の会がありますが、骨粗鬆症には全国的なものはまだありません。そういう点では、世界的にみて日本は立ち遅れています」

現在、友の会の萌芽といえる「東京骨を守る会」「骨粗鬆症ネットワーク大阪」「新潟骨を守る会」「名古屋骨を守る会」ができており、講演会、勉強会、ニューズレターの発行などの活動を行っている。

「こうした組織をどうサポートしていくかがこれからの課題といえます。こうした組織を全国に増やして、ネットワーク化するのが最終的な目標です」
 

骨粗鬆症研究の助成や諸外国との情報交換を

骨粗鬆症財団では、もう一方の柱として骨粗鬆症の予防および治療法、リハビリテーションを確立するための基礎・臨床研究に対して助成を行っている。

「当財団独自に行っているものと、製薬会社など企業と共同で行っているものとがあり、両方合わせて年間16件の研究に対して研究費の助成を行っています」

このほか、老人保健健康増進事業(国庫)や社会福祉事業団からの補助金を骨粗鬆症関連の調査研究に対して助成する事業も行っている。「IOF(国際骨粗鬆症財団)やその関連諸団体との情報交換や連携にも力を入れています。IOFは、世界の約70カ国から患者団体、研究者や看護介護専門家の団体、健康産業などの骨粗鬆症関連団体が加盟している組織で、骨粗鬆症の啓発活動を中心にさまざまな活動を展開しています。先進国の人口高齢化とともに、世界的に骨粗鬆症に対する関心が高まっています」

今後、中国をはじめアジアでも骨粗鬆症が増加すると予測されており、その支援も視野に入れて活動を進めたいという。


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