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月刊誌「健康づくり」2003年12月号より

日本ウエルネス協会の取り組みについて
 日本ウエルネス協会は、健康生活の推進を目的に設立された。健康生活を実践するための調査研究、普及啓発、人材育成、国際交流などを柱に、個人の「健康づくり」と、それを支える「まちづくり」事業を展開している。

「ウエルネス」は21世紀の新しい健康観
 日本ウエルネス協会の前身は昭和57年に設立された「健康生活推進協会」で、その後、昭和60年に「日本ウエルネス協会」に改称した。古川文隆専務理事に、日本ウエルネス協会の活動と「健康日本21」への取り組みについて話を聞いた。
 「ウエルネスというのは、単に病気や障害の有無で健康を考えるのではなく、生きがいや心の豊かさ、尊厳といった総合的な視点から健康をとらえようというものです。生活適応能力を高めるために、食生活・身体活動・休養などをバランスよく取り入れて生活習慣の改善を図り、自分のライフスタイルを確立することで、より充実した人生を目指す積極的な生き方を意味します」
 ウエルネスは、1960年代に米国の公衆衛生学者、ハルバート・L・ダン博士が提唱した概念で、70年代に「全米ウエルネス協会」を中心に米国で草の根運動として発展し、日本には80年代に紹介された。
 「具体的なイメージをつかんでいただくために、講演会などでは『五体不満足』を書いた乙武洋匡さんを例に挙げて説明しています。たとえ障害があっても、目的を持って前向きに生きている彼は健康だと思いますし、多くの人がそう感じているはずです」
 従来の健康観は、病気や障害があるかどうかで判断する客観的健康観だが、これからは、健康状態を自分で判断する主観的健康観が重要になるという。米国で行われた疫学調査によると、自分が健康だと考えている人ほど充実した人生を送っており、健康は疾病や傷害の有無だけで測れないという医学的データが発表された。WHO(世界保健機関)でも、21世紀はスピリチュアルな健康観を重視するべきだと提起している。

「健康日本21」に呼応してウエルネス運動を展開
 「日本における健康づくりは、いま大きな転換期にきています。少子高齢社会を維持していくには、社会経済システムの構造改革とともに、国民の健康に対する意識改革が必要です。『健康日本21』が目指しているのは健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上で、これはウエルネス運動も同様ですから、ウエルネスを新しい価値観として定着させたいと考えています」
 日本ウエルネス協会では、「健康日本21」や「健康増進法」に呼応して、包括的な健康づくりに関する調査研究、普及啓発、人材育成、国際交流などの事業を通して、ウエルネス運動を積極的に推進している。
 「運動を効果的に促進するために、〈まちづくり〉〈ひとづくり〉〈ものづくり〉〈ふれあいづくり〉〈ネットワークづくり〉の五つの領域に分けて目標を設定し、それらを有機的に連携させて事業を展開しています」

健康をテーマにしたまちづくりを推進
〈第12回全国ボランティアフェスティバル〉は石川県で開催され、広瀬久美子さんらのテーマトークをはじめ、各地でさまざまなイベントが繰り広げられた
ウエルネス指導の資格認定研修会の模様。理論学習とともに実習が行われる。ことしは東京の上智大学で11月29日、30日の2日間開催
ウエルネス指導の資格認定研修会の模様。理論学習とともに実習が行われる。2003年は東京の上智大学で11月29日、30日の2日間開催
 「健康づくりは個人の責任で行うものですが、それを支える社会システムがないと運動論として定着しません。『健康日本21』のベースになった米国の『ヘルシーピープル』のスローガンは『ヘルシーピープル・イン・ヘルシーコミュニティー』で、個人の健康づくりは健康的なまちで生まれるという考え方です。健康づくりは、個人・地域・行政の三位一体で行うことが重要です」
 日本ウエルネス協会では、こうした視点に立って「健康づくり」と「まちづくり」の融合化事業に取り組んでおり、「健康日本21」の市町村計画策定を支援している。
 「健康をテーマにしたまちづくりに関しては、平成5年度の『健康文化都市』、6年度の『健康保養地』、そして『健康日本21』という流れの中で事業を進めてきました。これからの健康づくりは、地域の自然・環境・歴史・文化・人材などを活用し、地域特性を生かした産業活性化につなげることが大きなテーマだと考えています」
 静岡県の伊豆では、医療と温泉、ウエルネス産業を組み合わせた新しい観光の振興策を模索しており、2003年7月に「伊豆観光の新展開/ウエルネスによる伊豆の活性化に向けて」と題した講演会が開かれ、古川専務理事が基調講演を行っている。
 健康産業は不況脱出の起爆剤として期待されており、厚生労働省以外の省庁でも積極的に取り組む姿勢をみせている。経済産業省では、健康サービス産業モデル都市構想(ウエルネスコミュニティー)を発表。林野庁は、高齢者の健康づくりの場として森林空間を利用することを計画中で、〈医療・福祉の森〉〈療養・保養の森〉〈生活習慣病予防の森〉の三タイプの森づくり構想を提案している。

指導者の養成とウエルネス商品の開発
 日本ウエルネス協会では、〈ひとづくり〉の柱として、個々人に応じた適切な支援やアドバイスができるウエルネス指導者の養成を行っている。
 その中核となるウエルネスデザイナーは、昭和60年から実施している制度で、「トータルなライフスタイルを指導できる人材が必要」ということでつくられた資格だという。学生が対象で、養成認定校に指定されている大学・短大・専修専門学校で所定の科目を履修することによって資格を得られる。これまでに約6千人がこの資格を取得している。
 ウエルネスリーダーは、一般の人が対象で、地域や職場でウエルネス運動の輪を広げられる人材の育成が目的。
 「〈ものづくり〉は、企業と提携して行う商品開発です。“より快適に、より健康的に、より文化的に”をコンセプトに、個人のライフスタイルやQOLの向上をサポートするための商品開発を目指しています」
 現在、約500の機関や団体との関係が成立しているという。
吉本興業と提携した〈笑いと健康〉プロジェクト
吉本興業の横澤彪専務取締役(右)と古川専務理事による楽しい健康トーク〈笑いと健康〉
吉本興業の横澤彪専務取締役(右)と古川専務理事による楽しい健康トーク〈笑いと健康〉
 日本ウエルネス協会では、〈ふれあいづくり〉の一環として、笑いをテーマにした健康づくりを提案している。この〈笑いと健康〉プロジェクトは、健康づくりを明るく前向きに提供しようというもの。
 「米国では〈ユーモアセラピー〉として、笑いが医療の現場に取り入れられていますし、日本でも笑いがリウマチ患者の健康によい効果を及ぼすことが実証されるなど、笑いと健康に対する研究が進められています」
 笑いには、NK細胞(ナチュラルキラー細胞。細菌、異物、がん細胞などを殺傷するリンパ球の一種)が活性化されて免疫力が高まる、脳波にアルファー波が多く現れて集中力や記憶力が高まる、腹式呼吸を促して血行をよくする、ストレスを解消する、コミュニケーションを円滑にするなど、さまざまな効用があるという。
 「笑いの集団・吉本興業と提携して、健康トーク〈笑いと健康〉を全国各地で年に15回くらい行っています。病気にならないようにといったネガティブな発想ではなく、生き生きと明るく生きるポジティブな考え方を広めたいと思っています」
 「〈ネットワークづくり〉も重要な事業です。全米ウエルネス協会をはじめ、世界各地のウエルネス専門機関と事業提携や情報交換を行っています。国内においても、健康文化都市協議会の事務局を支援していますし、まちづくり事業を通して交流のある自治体と連携してネットワークの拡大を図り、グローバルな展開を目指しています」
 国際会議やシンポジウムの開催も積極的に行っており、2002年度は、WHO神戸センターなどの後援で「健康文化のまちづくり」シンポジウムを開催している。

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